交換レンズレビュー

お散歩・日帰り旅行向け「50mm単焦点レンズ」(その4)

ニコン NIKKOR Z 50mm f/1.4

焦点距離50mmは写真用レンズの基本ともいえます。そこでこのたび、お散歩・日帰り旅行向けともいえる小型軽量なミラーレスカメラ用の50mm AF単焦点レンズを、一挙に紹介していこうと思います。

今回はニコンの「NIKKOR Z 50mm f/1.4」をとりあげます。

外観・仕様

「NIKKOR Z 50mm f/1.4」は、2024年9月に登場した35mmフルサイズ対応の50mm単焦点レンズ。新しく登場した大口径レンズですので、さぞや良いお値段かと思いきや、絞り開放F1.8の「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」よりも低価格であったりします。

といいますのも、「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」がNIKKOR Zレンズの高性能ライン「S-Line」に属する一方、本レンズはいわば無印のNIKKOR Zレンズであることが理由だと思われます。大きなボケを楽しめる大口径レンズでありながら、コンパクトでコストパフォーマンスに優れているレンズだといえましょう。

操作系

外形寸法は約φ74.5mm×86.5mmで、質量は約420gとなっています。「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」ともさほど変わらないことからも、本レンズが比較的コンパクトな大口径レンズであることが分かります。

コストパフォーマンスの高いレンズらしく、スイッチやボタン類はいっさい装備されていません。しかし、最新のNIKKOR Zレンズということで、「フォーカスリング」の手前には、さまざまな機能を割り当てることができる「コントロールリング」が搭載されています。

また、鏡筒の前側には金属リングが採用されており、コスパ重視のレンズとはいえ質感の高い仕上げもみられます。

「HB-115」という花型のレンズフードが同梱しています。これまたなかなかにシッカリとした造りのレンズフードで、底が深く遮光効果も優れているので、撮影時にはキチンと装着したいものです。

作例

「絞りを明けて柔らかく、絞るほどに鮮明に良く写る」といった、古風な作法をもったレンズです。そのため、風景写真などで画面全体をシャープに写したいときは、ある程度以上に絞り込んで撮るのが定石といえるでしょう。本来の大口径単焦点レンズらしい味わいが楽しめます。

ニコン Z6 III/NIKKOR Z 50mm f/1.4/50mm/絞り優先AE(1/400秒、F8.0、−0.3EV)/ISO 100

最短撮影距離は0.37mで、そのときの最大撮影倍率は0.17倍となっています。ミラーレスカメラ専用の50mmレンズとしてもよく寄れる方で、往年のオールドレンズとは比べるまでもありません。それでいてEDレンズなどを使わずに、軸上色収差を抑えている様子がうかがえます。背景のボケ味も自然で、現代的な描写性能として、押さえるべきところはよく押さえてあると感心しました。

ニコン Z6 III/NIKKOR Z 50mm f/1.4/50mm/絞り優先AE(1/4,000秒、F1.4、±0.0EV)/ISO 400

イメージした通りに被写体を切り撮りやすい焦点距離50mmが持つ画角と、幅広く被写界深度を選べるF1.4の大口径はやはり相性が良いように思われます。「Zf」以降のニコンデジタルカメラに搭載されているピクチャーコントロール「ディープトーンモノクローム」で撮った下の作例も、ベンチの存在感を思った通りに表現できました。

ニコン Z6 III/NIKKOR Z 50mm f/1.4/50mm/絞り優先AE(1/1,250秒、F2.0、+0.3EV)/ISO 100

まとめ

絞り開放での柔らかい描写から高い鮮鋭性のある描写までを撮影者が選択できる楽しさは、往年の50mmレンズを彷彿とさせてくれるものです。それでいて、デジタルカメラではアラを感じやすい軸上色収差をよく押さえているなど、現代的な要求にもシッカリ応えてくれている。

NIKKOR Zレンズにおける標準域の単焦点レンズといえば、「NIKKOR Z 50mm f/1.8 S」はもちろんのこと、「NIKKOR Z 50mm f/1.2 S 」や「NIKKOR Z 58mm f/0.95 S Noct」といった上級ラインのレンズが目立っていましたが、ここにきて親しみやすいレンズが出たことは、ユーザーにとって喜ばしいことだと思います。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー)など。