大川総裁の指示文書を入手！ 対創価戦略に見る幸福の科学の闇

1995年に幸福の科学の大川隆法総裁が、日蓮正宗の名を用いて創価学会批判のビラを撒くよう教団幹部に指示していたことがわかりました。元職員から本紙に提供された大川総裁直筆とみられる指示文書に記載されていたものです。当時、幸福の科学は創価学会批判を展開しており、大川総裁は学会からの報復を意識していました。実際には創価学会からの報復はなく一人相撲に終わったようですが、一連の指示書類からは、幸福の科学の対外活動の内情が垣間見られます。


■その名も「パトリオット戦略」

問題の指示文書は、1995年3月1日に大川総裁から当時の幸福の科学専務理事、常務理事、事務局長、広報局長宛てにFAXされたものです。タイトルは「パトリオット戦略」。

当時、幸福の科学は『創価学会亡国論』『永遠の挑戦―国難襲来への警鐘』『あなたもできる!選挙違反撃退完全マニュアル―創価学会による選挙違反の手口を全公開!』（いずれも幸福の科学出版）といった書籍を発刊し、創価学会批判キャンペーンを展開していました。大川総裁は、これに対して創価学会からの報復があると考えたらしく、FAXの中でこう書いています。

【1995年03月01日】パトリオット戦略

Ｓからの、蛇、カエル、鳥等の死骸、住居侵入、子どもへのイタズラ、脅迫電話、まとわりつき等が会った場合、被害を受けた職員or会員の住む同一町内に少なくとも手引きのため一人はＳ信者がいるはず。そこで被害が発生したらパトリオット的にその町内に次のようなビラを撒く。

（例）
＜ご注意＞
ご町内の皆様、最近Ｓ信者が郵便受けに蛇（カエルその他）の死骸を投げ込む事件が多発しています。防犯灯や防犯ビデオを設置するなどしてくれぐれもご注意ください。
＜日蓮正宗有識者の会＞
（略）

（※本紙註：この書面の日付が「3/1/94」となっていますが、職員によると、これは大川総裁の誤記であり、実際に幹部に送信されたのは1995年3月1日とのことです）

この資料を本紙に提供してくれた元職員は、こう語ります。

「FAXにある“Ｓ”は創価学会のことを指しています。自分たちから喧嘩をしかけ、やり返してきたらという前提でなされたものですが、実際のところ幸福は創価にまるで相手にされず結局一人相撲で終息しました」

■教団広報は「真偽の確認できない」

本紙・藤倉が幸福の科学グループ広報局にこの文書を送り、以下の質問をしました。

(1) 指示書中の「日蓮正宗有識者の会」とは、具体的にどういう団体か。

(2) 幸福の科学が日蓮正宗と連携したことがないなら、この指示書は、大川総裁が日蓮正宗の名を騙って創価学会を批判するよう指示しているものと受け取れるが、この点についてコメントを。

(3) 創価学会信者から幸福の科学の職員や会員に対して、蛇やカエルや鳥の死骸が投げ込まれたり、住居侵入や脅迫電話があったのか。

(4) この指示書にあるようなビラを幸福の科学が実際に配布したことはあったのか。

教団側の担当者からは「当方にはこうした文書は存在しておりませんでした。したがいまして、真偽の確認はできません」との返答が来ました。また、上記の各質問については、以下のような返答でした。

「20年近く前のことですので、書面にある「日蓮正宗有識者の会」という団体については、具体的なことは存じ上げませんが、日蓮正宗の信徒で当会の信者になった方や、日蓮正宗の信徒の方とお付き合いしている方がたくさんいらっしゃいますので、その関係でそのような団体とのお付き合いもあった可能性はあります。※質問では、「大川総裁が日蓮正宗の名を騙って」などと表現されている点について抗議いたします」

「当時、そういうことがあったと言われていますが、詳細は分かりません。但し、95年2月に発刊された『創価学会亡国論』などには、嫌がらせの内容が記されております」

「ビラの配布については全く分かりません」

なお、『創価学会亡国論』では、幸福の科学信者が受けたという嫌がらせがリポートされていますが、創価学会によるものであるとの確証は示されておらず、「ある特定の団体」「某宗教団体」と表記したり、「それが創価学会だとすれば」という表現で断定を避けていたり、実に微妙な言い回しばかりです。また、指示文書にあったような、「郵便受けに蛇（カエルその他）の死骸を投げ込む事件」というものは登場しません（魚の頭や切り身、挽き肉は出てきますが）。



■「日蓮正宗の協力なんてありえない」

日蓮正宗本部の関係者は本紙の取材に対して、幸福の科学との提携について全否定。

「そのような事実はないし、日蓮正宗有識者の会という組織も実在しない」（関係者）

また創価学会と日蓮正宗に詳しいジャーナリストの山田直樹氏は、こう解説します。

「日蓮正宗にしてみれば、基本的に他宗全てが邪宗。当然、幸福の科学もです。たとえ創価学会批判のためでも、日蓮正宗が幸福の科学と組むことはありえません」（山田氏）

幸福の科学広報局が「日蓮正宗の信徒で当会の信者になった方や、日蓮正宗の信徒の方とお付き合いしている方がたくさんいらっしゃいますので」とコメントしている点について、山田氏は「それはウソです。絶対にありえない」と一蹴。

「日蓮正宗において“日蓮正宗○○の会”と名乗ると、それは僧侶の組織を意味する。信徒組織であれば“日蓮正宗門○○寺○○講”などと、信徒の所属の寺や講（信徒組織）を明示します。日蓮正宗はこういうところが非常に厳密で、もし信徒組織が“日蓮正宗○○の会”などと名乗れば内部で問題になる。幸福の科学の活動に本当に日蓮正宗信者が関わっていたのであれば、なおのこと“日蓮正宗有識者の会”などというネーミングはありえません。幸福の科学は、もう少し日蓮正宗のことをお勉強された方がよろしいのでは？」（山田氏）

日蓮正宗関係者と山田氏の説明が正しければ、大川総裁の指示文書は、日蓮正宗を騙って創価学会批判をするよう指示していることになります。

■元旦に“対創価戦争”を宣言

そもそも、なぜ幸福の科学はこのとき、創価学会とのケンカに熱をあげていたのでしょうか。

「フライデー事件のあった91年以降、95年頃までは、内部では根本経典『正心法語』と『太陽の法』を改定して、それまでの霊言を“方便”として過去に追いやりました。同時に会に批判的な古参の職員なども非情に切り捨て、大川隆法個人崇拝の“三法帰依体制”への強化を図り、外部的にはマスコミからの批判に対して細々噛みついたり裁判を起こすなどして、他宗批判はその合間にする程度でした。マスコミを牽制しつつ内部固めをしていた時期です」（元職員）

元職員によると、大川総裁が対創価戦を宣言したのは95年元旦。数日後には、ある幹部を創価学会対策の総合本部長に据えて、全職員の前で辞令交付を行ったといいます。

「唐突とも言えるこの宣言に踏み切った理由は、おそらく同年7月に予定されていた参議院選。創価戦についての最初の議題が、職員の佐藤悠人弁護士が監修した『選挙違反取り締まりマニュアル（Ｓ用）』の承認でした。この弁護士は大川が創価との全面戦争を企画しているとまでは考えていなかったようで、書類の承認後、猛然と反対論を展開し始めたそうです。大川は佐藤について『創価に弁護士が100人以上いると怖がってるんだ』と立腹し、その弁護士を除外して創価戦を決定しました。この時の基本的な方針は、創価学会を『暴力革命』と印象づけて、自らは非暴力をPRして言論戦を仕掛けることを中心でやっていこうというものでした」（元職員）

■PR目的の「非暴力」

この対創価戦争に関しては、95年1月に大川総裁が発した指示文書もあります。

【1995年01月10日】対Ｓ対策

①基本的には言論戦によるマスコミ的戦いを中心とする。（講演、単行本、月刊誌、リバティ、広告）
→知力戦・頭脳戦
②地上兵力を動員しての白兵戦は、敵に利があるので極力避ける。（電話、FAX、大勢をくり出しての威迫、抗議集会、戦闘用の出城づくり、警備要員の採用、武器まがいのものを用意することなど）
→Ｓの「暴力革命」に対しガンジー的非暴力主義をPR。
（略）

「電話、FAX、大勢をくり出しての威迫、抗議集会」って、幸福の科学がフライデー事件において講談社に対して行ったことそのまんまです。あれは“白兵戦”だったのですね。しかもこの「対Ｓ対策」では、「ガンジー的非暴力主義をPR」するために暴力的な“白兵戦”を避けるという文脈になっています。「そういうことはしてはいけないから」という理由ではないところが、なんとも独特です。それって本当にガンジー的なんでしょうか。



■“住民ではない左翼運動家”って何だ！

今回この指示文書が本紙に提供されたのは滋賀県大津市仰木の里における幸福の科学学園問題に関連してのことです。建設予定地周辺では今年8月以降、住民の自家用車が破壊されるなどの不審な事件や、鳥の死骸が民家の庭先や路上に放置されるという出来事が続発しています（本紙＜幸福の科学学園・予定地周辺の治安が悪化中＞参照）。

「しかし幸福の科学信者の仕業だという証拠があるわけではないので、住民の方々には冷静であって頂きたいと思っています。ただひとつ、私がどうしても許せないのは、教団関係者かシンパとおぼしき人々が、やや日刊カルト新聞のコメント欄などで、現地の治安悪化を“住民ではない左翼運動家”によるヤラセであるかのように執拗に印象づけようとしている点。現地住民さんの生活環境の治安維持の観点から極めて重大な問題なのに、この事態を利用して住民側を陥れようとする手法は見るに堪えません。ここで教団側の根底にある性格を、具体的資料に基づいて明らかにしておきたいと思いました」（元職員）

■「迷惑の種をまく加害者が被害者面」

本紙のコメント欄では、確かに元職員が指摘するような投稿が多数見られます。またそれらのコメントが、教団の内部で大きなイベントが行われている最中には投稿されないという不思議な現象も確認されています。

「今回、私が提供した資料にある“Ｓ（創価学会）”を、“仰木の里の住民”に置き換えてみれば、この教団のやることは当時と変わらないように思います。迷惑の種を撒いて歩く加害者が、被害者面して邪魔者を非難するというパターンが、幸福の科学の本質なのではないでしょうか」（元職員）

仰木の里の不審事件に幸福の科学が関与していると言える根拠は、いまのところありません。しかしいずれにせよ、今回ここで公表したような指示文書が内部で飛び交っているような教団では、周辺住民の信頼や理解を得るのは難しいのではないでしょうか。

幸福の科学学園関西校は、すでに施設建設のための手続きを終え11月1日に着工しています。これに対して住民側は、大津市建築審査会に建築確認の取消を求める審査請求する予定で、審査の結果が出るのは来年4月頃と思われます。滋賀県私学審議会は施設完成後に学校設置の妥当性を最終判断します。

【参考記事】
アンチHS／緊急　 幸福の科学の教祖は犯罪行為がお好き