せめてせめて、せめて手入れの行届いた余所さまのお屋敷の花を、眺めさせていただこう。 信用金庫の私の口座に、保険会社から大金が振込まれてきた。拙宅が見舞われた「もらい交通事故」の弁償金である。私の取り分などない。はなからそのつもりだった。全額が後始末にご尽力くださった工務店さんへの、遅れに遅れた支払い分である。つまり大金は、即日わが口座を経由して出ていった。 事故に見舞われたのは、昨年の四月五日の正午過ぎだった。運輸会社の大型トラックの荷台最上部が、拙宅の桜の老樹に衝突したまま強引に突っ切ろうとして、老樹をへし折った。委細は省くが、巨木の始末と、巻き添えを喰って歪んでしまったブロック塀の解体とを…