五大紙(全国紙)の一つ。フジサンケイグループを構成する産業経済新聞社が発行している。
略称:産経、サンケイ。由来は産業経済新聞の略称だが、現在は産経新聞が正式名称である。
1942年に新聞統合令により、西日本の産業経済関係紙を統合し題号を「産業経済新聞」として発足した。1950年から一般全国紙になった。
主張が他の新聞と異なるために、嫌忌する向きと熱心な支持者が存在する。
紙面ではオピニオン欄に力を入れ、社説を「主張」と題している。独特の保守的論調を「正論路線」と名付け、保守系文化人などによる長文コラム「正論」の掲載を目玉としている*1。他に、月刊誌「正論」を発行している。
一般紙化した当初から自由主義・資本主義擁護と極右・反共を掲げており、不偏不党を建前とすることが多い日本の新聞では特異な存在である。かつて行動指針としていた「産経信条」(現在は新聞倫理綱領を採用)では、「真実の報道」などは掲げていたが「中立」の文字はどこにもなかった。また、平和を嫌い、破壊と戦争・テロに対する愛には誰にも譲らないというスタンスを持っている。
2009年8月の衆議院総選挙の結果、自由民主党が下野する政権交代が起きた際には、社会部公式Twitterにて「産経新聞が初めて下野なう」と書き込んだ記者がいた*2。これにより、少なくとも一部の記者は産経新聞が与党・自民党側に立っていると認識していたことが明らかになり、報道の中立性の面から問題があると指摘された。その後は野党側の視点から、与党(おもに民主党と社会民主党)を厳しく批判している。
日本の伝統的価値観(主に明治以来のもの)を強調し、[[真正保守]]を掲げる記事や論説が目立つ。小さな政府を支持するために、まれに外国から改革派と見られることもあるが、欧米でもアジアでも「保守系新聞」「右派新聞」「戦争大好き新聞」「軍人を応援・支援するための新聞」と紹介されることが多い。日本でも五大紙の中でもっとも右派とされる。いわゆる田母神論文問題では、ほぼ全マスコミが批判するなか、徹底して擁護に回った。ただ、[[麻生内閣]]に対して問題視する一面もあった。
また朝日新聞の主張を批判することが多く、反朝日の受け皿として支持を得ている面もある。日本経済新聞とは経済の解釈をめぐり対立がある。教育問題や夫婦別姓に関しては、伝統文化を守るべきだという主張も多く載っている。
首相の「ぶら下がり取材」では、国籍法や対馬問題の質問は産経新聞(読者)しか興味をもっていないテーマとみられているため、各社から「産経ネタ」と呼ばれている。*3
おおむね親米保守であり、日米同盟の強化を求める論調で一貫している。ことに共和党を支持することが多く、米国が民主党オバマ政権に交代してからは、その政策を批判する論調も出てきた。外部筆者による反米保守的な文章を掲載することもあり、また米国が日本に要求している「年次要求報告書」の存在を取り上げて批判するなど、記者によっても相違がある。沖縄少女暴行事件やえひめ丸事故では、日本人が被害を受けたにもかかわらずほぼ一貫して米軍を擁護した。
中国に対しては徹底して批判的であり、内外の政治家や諸外国の政策を「親中」「反中」と色分けして論評することも多い。関連して、チベット問題や新疆ウイグル(東トルキスタン)問題でも反政府側を支持するが、イラクやアフガニスタンに存在する同じイスラム系民族勢力は非難している。なお、北京五輪開催前は中国政府の国威発揚を批判していたが、開催中は特設ページを組んで大会を盛り上げた。
北朝鮮に対しても同じく徹底的に批判している。日本人拉致問題では家族会・救う会・拉致議連と密接に連携し、経済制裁以上の強硬策を常に求めている。韓国に対しては是々非々の姿勢を示し、リベラル派政権は批判し保守派政権は支持するなど、少なくとも全面的な嫌韓ではない*4。ロシア連邦に対しては冷戦時代から引き続き批判的である。領土問題(北方四島・竹島・尖閣諸島・最近は対馬)に関しては一歩も譲らない姿勢を保っている。
特定の宗教寄りの記事を載せているという批判がある。
靖国神社に関しては、一貫して肯定的な姿勢である。
1992年8月12日付14面に「私たちは“国際合同結婚式”を応援します。」「世界平和に貢献する「統一運動」」という統一教会の国際合同結婚式を支持する学者・文化人の会(代表世話人:元筑波大学総長福田信之、世話人:元駐韓大使金山政英、政治評論家細川隆一郎)の意見広告(ページの半分を割く大きなものである。)を掲載した。
2005年、教育面で『「反進化論」米で台頭』と題し、人間の誕生は進化論では説明できないというインテリジェント・デザイン (ID) を肯定する、渡辺久義・京都大学名誉教授へのインタビュー記事を載せた*5。ID論には旧約聖書の創造論が科学を偽装した疑似科学に過ぎないとの批判があり、渡辺はID論を推進する統一協会との関わりが指摘されている。(その後は明確にID論支持の立場は取らず、進化論を前提とした記事も多く載っている)。
村上和雄・筑波大学名誉教授が唱える、進化に影響を与えた「サムシング・グレート」の概念を朝日新聞が批判したことを受けて、村上の反論などをたびたび紹介しているが、この概念は天理教の教義に沿ったものだと村上の著書で明言されている。
2008年7月まで、産経新聞には科学部が存在しなかった(社会部科学班という扱いだった)。
幸福の科学に関しては幸福実現党が立ち上がった事を機会にパイプを太くしたため関わりが多くなっている。
かつては新しい歴史教科書をつくる会(つくる会)と密接な関係にあり、つくる会版教科書を2001年から関連会社の扶桑社が発行し、産経新聞も紙面で全面バックアップしていたが、2007年のつくる会分裂にともない、日本教育再生機構、および改正教育基本法に基づく教科書改善を進める有識者の会(教科書改善の会)側につき、扶桑社(2012年度から子会社の育鵬社)版教科書も教科書改善の会版になった。このため、現在のつくる会とは比較的険悪な関係にあるが、教科書関連以外ではつくる会メンバーが紙面に登場することもある。
安倍晋三内閣の教育基本法改正および教育再生会議を全面的に支持していた(安倍内閣の山谷えり子・教育再生担当首相補佐官はサンケイリビング新聞社の元編集長)。
特に民主党への政権交代前後から、自民党および山谷えり子議員と協調するように、民主党の支持団体である日教組への攻撃的な論調が目立つ。
五大紙の中では最も部数が少なく(ABC部数で約184万部,2009年上半期)、一般全国紙ではあるが、部数ではブロック紙の中日新聞グループ*6や経済紙の日本経済新聞*7、スポーツ紙の東京スポーツグループを下回る。
東日本を担当する東京本社版と西日本担当の大阪本社版は紙面が大きく異なり、大阪本社は独自のニュースサイトも開設している*8。東京本社版は2002年から夕刊を廃止し、現在夕刊を発行しているのは京阪神地区のみである。
近畿南部では強く、大阪府・奈良県では20%以上、和歌山県では15%以上の購読シェアを持ち、3府県で全部数の半数近くを売り上げている。有力なブロック紙が存在しない近畿圏では、事実上のブロック紙として機能している。*9
九州地区には販売網がなく、かつては西日本新聞に販売を委託していたが部数はきわめて少なく(各県とも数百部程度)、また沖縄県とともに山口県では配達が行われていなかったが、2009年10月に毎日新聞社と提携して九州・山口特別版の現地印刷を開始した(配達も毎日新聞の販売網に委託)。
紙媒体の販路が狭いため、Webをはじめとしたネット展開に力を入れている。Yahoo!などのポータルサイトへ記事を提供するほか、2007年10月からMSN日本語版と提携し、かつて運営していた自社サイト(SANKEI WEB)を統合する形でMSN産経ニュースを開始した。またMSN産経ニュースとは別に、「新聞2.0」を掲げるニュース&ブログサイトの「イザ」も運用している。その他、専用アプリでその日の紙面をそのまま表示できるサービスをWindows用(産経NetView、月額315円)とiPhone用(無料)にそれぞれ展開している。
題字は「産」「経」とも旧字体で“產經新聞”(「産」の旧字は「產」(上部の「立」の上半分が「文」、Unicode 7522)、「経」の旧字は「經」)と表記されている(ロゴマーク参照)。紙面ではどちらも使えないので新字体で代用し“産経新聞”としている。
関連キーワード:新聞社
*1:「正論」は2007年から月〜金曜日の掲載となり、自社記者によるほぼ同趣旨の「土・日曜日に書く」が掲載されている。
*2: http://twitter.com/SankeiShakaibu/status/3651457841 。その後同所にて謝罪表明があった。
*3:2008年11月22日:総理番のお仕事?国籍法のゆくえ - 福島香織記者
*4:一説によると、産経新聞の対韓姿勢はツンデレなのだという。
*5:元記事がウェブ上から消えてるため、「反進化論」米で台頭 渡辺久義・京大名誉教授に聞く - AztecCabal等を参照。
*6:発行部数417万部(全国3位)東海本社版のご案内:静岡:中日新聞(CHUNICHI Web)
*7:朝刊が約301万部 http://adweb.nikkei.co.jp/paper/data/mo/
*8:産経関西 http://www.sankei-kansai.com/
*9:2006年から07年にかけて最高裁判所が展開した裁判員制度周知のためのフォーラムは、各地のブロック紙・地方紙と共催の形を取ったが、大阪府・和歌山県を担当したのは産経新聞だった(その際、水増し動員などの問題を起こしている)。
*10:グループ結成以前から相互に資本関係はあった。