わたしがはじめてこの曲を聴いたのは、偶然つけたテレビで
NHKの「みんなのうた」が始まったときでした。その曲の初めて
見るタイトルと、イラストの黒いネコに、思わずはっとなりました。
去年の夏に、我が家は家族みんなが大切にしていた黒猫を亡くして、
なんだかさびしくなった毎日を過ごしていました。彼はおととしの
秋に、家の近くに捨てられていたのを、我が家で飼うようになった
仔猫でした。とても人懐っこく、うちの自営業の工場に来ては、父や
母が働くそばでねそべって、作業を何時間も見つめていました。
わたしが夜遅く帰宅したときは、玄関で待つようにつったっていて、
ひとこと「にゃあ」というのでした。そんな愛らしい家族を、うちの
家では、数ヶ月前に病気で失ったばかりでした。
そんなときに「クロ」をきいて、母もわたしも思わず泣きました。
この曲が、彼の姿を、彼と過ごした日々をありありと思い起こさせて
くれたからです。
初めて出会ったときのこと。
寝床でいっしょに寝たときのこと。
帰りを待っていてくれたときのこと。
重い病気と戦った日々のこと。
そんなある日、ふらりと家を出ていってしまったときのこと。
もう戻らないとわかっていながら、なんだかどこかで生きている
ような気がして、さびしい日々を過ごしていました。
でも、うたの中で「そっとこの夜空になった」という詩を聞いたとき、
胸がはじけるような思いがして、涙が自然にあふれてきたのでした。
でも、それは彼への感謝の涙でもありました。
詩の中にあります。「君に会えたことが宝物」と。
もう二度と会えなくなったことで悲しんでばかりいましたが今思えば、
彼に会えたことが、宝物だったのです。たとえ短い時間でも、彼と
ともに時を過ごせたことが、わたしたち家族にとって、かけがえのない
幸せだったのです。
このうたは、そんなペットへの感謝の気持ちを起こさせてくれるうたでも
あるのだと思います。ペットロスを経験した方には、悲しい気持ちを
呼び起こさせるかもしれません。でも、ペットたちはその生き様でもって
わたしたちに人生の宝とも言うべき思い出と、感動と、ときには学びをも
与えてくれます。そのペットたちへの感謝の気持ちをも、このうたは
沸き起こらせてくれると思います。
とってもいい歌だと思います。どんなかたにも、ぜひおすすめしたいです。
長くなりましたが、最後まで読んでくださってありがとうございました。