Amazonレビュー
本作でトラヴィスは大きな路線変更はしていないが、それは決して悪いことではない。トラヴィスがレディオヘッド以降のバンドのなかで最もシンプルなバンドだという評判は、愛情のこもった賛辞には聞こえないかも知れないが、彼らの大いなる魅力を説明しているのはまちがいない。
本作は、その陽気なとっつきやすさと、単純な天気の隠喩を用いた手法で、90年代のインディーズロック界屈指の人気アルバムとなった。そして、「Side」の歌詞(「いつだって隣の芝生は青いし、隣の家が買った車は運転してみたかった車だ」)からして、この3作目となるフルアルバムでも、トラヴィスがファンが勇ましいサウンドを期待しているわけではないことに気づいているのは明らかだ。実際、それはたいした問題ではない。というのも本作は自然体で愛らしく、全編通して力みがないアルバムなのだから、非難するのはまったくもって野暮な話だ。
オープニング曲「Sing」は、デビュー時を思わせるサウンドで、トラヴィスのメンバー全員がバンジョーを懐かしがっているようだ。華やかな「Flowers In The Window」は、マッカートニーの最高のビートルズソングを思い起こさせる。シンセを取り入れた「The Humpty Dumpty Love Song」には、トラヴィスのセンチメンタルな気分が出ている。「Pipe Dreams」では、「もし天国があるなら、神に祈りたい」とフラン・ヒーリーは歌いながらも、「けれども天国という言葉は、この場所とはあまりにもかけ離れているようだ」と続けている。そして、それこそが、トラヴィスがこれほどの人気を得た理由を物語っている。彼らが隣の家にいそうな地味で純朴な少年であり、今でもシンプルな歌を歌って、ありふれた事柄を美しく奏でているからなのだ。(Louis Pattison, Amazon.co.uk)
メディア掲載レビューほか
みずみずしく深遠な感性と、詩情的な美メロのブリティッシュ・ロックで定評を得るトラヴィス。1999年のセカンド・アルバム『ザ・マン・フー』同様、ナイジェル・ゴッド・リッジのプロデュースによるサード・アルバム。「ザ・ケイジ」「セイフ」他、シンプルでアコースティック、表情豊かなポップ・ソングを15曲。 (C)RS