最近の二回の記事で、学生生活の長いスパンでの振り返りをしたのですが、博論提出直前の時期にやることが色々あって、かなりばたばたしたので、誰かのお役に立てればと思ってTipsを残しておきます。
特に私は研究室を離れており、気軽に訊ける先輩が身近にいなかったので(今思えば連絡して色々尋ねればよかったのですが)、ぎりぎりで焦ることも多かったです。もちろん、先生に尋ねてみるのが確実だと思います。
以下の内容は、あくまで、2024年度の京大文学研究科の場合ということでご承知おきください。
試問の前後にやること(そのうち忘れがちなもの)
- 博論提出~試問前
- 12月上旬に提出しました。色々な都合から、単位取得退学後に出すのではなく、博士課程が終わると同時に出したかったからです。研究公正チュートリアルや、ウェブシステム上での研究報告書の提出など、ここに至るまでにやるべき手続きも色々あるので、気を付けてください。
- この時点では、自分で印刷して、手製の製本で綴じたものを3部提出しました(生協に、熱で溶かしてくるみ製本する機械が置いてあり、そのための表紙カバーも売っています)。履歴書・レポジトリ公開関連の書類など、他にもいくつか提出すべき書類があります。全部事務を経由して提出するので、遅れたので先生に直接持って行く……とかはできません。
- 製本の際、冒頭に研究公正誓約書を入れて、署名するのを忘れないようにしましょう。
- ちなみに博論提出に至るまでは、博論の構成や内容について、指導教官と年に一~二回相談しました。人によってはもっと多かったり、少なかったりするでしょうが、できればこまめに指導を仰ぐ方がよいでしょう。
- 試問後
- 2月中旬に試問、3月上旬に上製本の提出というスケジュールでした。
- 博論提出後に博論の内容を修正することは原則的にはできないですが、現実的には、論旨に影響しない細かなミスを修正する必要があったりします。この間の期間で多少の修正が必要という前提でいた方がよいでしょう。
- 3月上旬には、図書館に入れる用に、博論の上製本(ハードカバー)の提出が求められます。てっきりくるみ製本でいいと思っていたので(図書館に入っているくるみ製本の本もたくさんありますから)、うっかりしていました。
- 上製本を製本会社に依頼する場合、色々と制約がかかる場合があるので気を付けましょう。日数も、混みあう時期なので一週間以上かかるケースがあります。
- 私の分野で多いのは、タイトルや名前に珍しい漢字が使われていて、ハードカバーに文字を彫り付ける際に必要になる活字が無い、というケースです。
- 活字が無い場合、キンコーズなどの大手では印刷を断られることがあり、活字を作って製本してくれる会社を探す必要があります。
- 私もこの状況に陥っていたのですが、「どんな文字でもPDFで入稿すればハードカバーに文字を載せられる」という製本会社を見つけて何とかなりました(https://www.lbs-hs.co.jp/)。この会社、納品もやたら早く、「混みあう時期だから遅れる」的なことも無いらしく、その割に値段は他と変わらないので、おススメです。(その代わり、PDF入稿からそのまま自動的に印刷に回されるので、致命的なミスがあってもそのまま印刷されることになります。たとえば、入稿の際のチェックボックスに「片面印刷」と「両面印刷」がありますが、これを間違えていたとしても、特に確認は無くそのまま印刷されて郵送されてくることになります。)
- 結局は、早くて便利なところにもデメリットはあるし、事前に考えておくことが大切ということです。1月中に、一回製本会社に打診しておくと無難でしょう。予約や細かな相談に乗ってくれるところもあると思います。
- 上製本でも、冒頭に研究公正誓約書を入れておくのを忘れないようにしましょう。高い値段がしますから忘れると悲惨です。サインは納品されてから直接書けば良いでしょう。
- 私の場合、2月中旬に試問→3月上旬に最後の提出だったので、上製本の製本日数には肝を冷やしました。上の会社が見つかって良かったです。ちなみに、くるみ製本なら、たとえばキンコーズなら10冊程度頼む分には数時間で納品してくれます。
- 上製本の提出は、郵送でもオッケーです。その場合、要約と全文データはメールなどで送付することになります。
おまけ~博論原稿のPDF化~
もう一つ、私の場合に面倒だったのは、完成原稿のPDFファイルの扱いです。というのも、私は縦書き原稿で、Wordだとあまりきれいに出ないので(細かくこだわらないならWordでもいいですが)、「一太郎」という日本語ワープロソフトを使っていたからです。
「一太郎」なんて聞いたの何年ぶりだよ……という方もいらっしゃるかもしれませんが、いまだに、日本語で原稿を書いて印刷するなら、最高峰のソフトだと思います。ルビ・禁則処理・インデント・縦中横などはもちろん、フォントが違う場合に微妙に上下左右にズレる字を単体で修正するとか、そういうこともできます。出版社なら「Indesign」を使うのでしょうし、たぶんその方が便利ですが、買い切りプランが無く、個人で使い続けるには値段が高すぎるのが難点です。
私はやったのはこういう方法です。
- Visual Studio Codeでマークダウン式で原稿を書く(参照:Visual Studio Codeで文系論文を書きたい - 達而録、Visual Studio Codeでの旧字体・新字体変換 - 達而録)
- それをコピーして、google documentで「マークダウンから貼り付け」→「docx形式で保存」することでワード形式のファイルにする
- これを「一太郎」で読み込む
- 「一太郎」で、Wordが勝手に設定したスタイルを全部剥がす
- 「一太郎」で統一したスタイルにセットする
②の手順を挟む必要があるのは、一太郎がマークダウン形式に対応しておらず、注釈がうまく入ってくれないからです(マークダウンをdocxに変換するVSCodeのプラグインがあるのは知っていますが、自分はこうやってます)。一太郎はdocxファイルなら一応読み込んでくれるので、これで注釈の属性だけを入れてから、他の不要なWordの設定は全部削除するイメージです。
多分、こんなやり方で印刷用のPDFファイルを作ったのは史上初だと思いますが(なにせgoogle documentでマークダウン形式の変換が可能になったのが最近ですから)、本自体は綺麗に仕上がったので満足しています。複雑そうに見えて、やることはコピペで済みますから、見かけほど大変なわけではありません。
ただ、「一太郎」は文章量が多いと重くなるのと、私が各章別に注釈を作りたかったということがあり、各章を分けて別々のファイルとして作成し、ページ数が連番になるように調整するという方法を採りました。その結果、表紙+背表紙+7章+序論・結論・参考文献で計12のPDFファイルに分割されるということになりました。
一太郎で出力するPDFファイルはサイズが大きめで(これは私の使っているバージョンが古いからかもしれません)、ネット上のサービスでPDFを結合する時に色々と不都合が大きく、一回各ファイルを縮小して、それを結合して……と、なかなか面倒でした。本提出の際だけではなく、キンコーズにくるみ製本を依頼する時にも、本文のデータが分かれていると手数料が高くなるので、結合した方がいいです。
また、最終提出の段で、使うファイルが一つに統一されないというのも面倒なところです。なぜかと言うと、
- 上製本→表紙・裏表紙・本文の三つに分かれたデータ(私が依頼した会社の場合)を入稿。誓約書はサイン前のもの。
- 事務に送る本文データ→表紙・誓約書(サイン済)・本文をまとめたデータを送付。
などと求められるファイルが微妙に違ったりするからです。他に個人的に人に渡す用に印刷する本があったりすると、また変わってくるかもしれません。
私の場合は、結局は文章ファイルなので大変といってもたかが知れていますが、画像をふんだんに使う場合だと、また大変なことが増えると思います。早めの準備が大切です。
(棋客)