今回あらたに出した本、『未来の働き方を考えよう』の根本思想は、20代で初めての職業を選ぶ時に、一生を捧げられる「やりたい仕事」を見極めるなんて不可能だし、
そんなことを目指すこと自体、ナンセンスだよということです。
もちろん何でも例外があるように、10代半ばからなんの迷いもなく「オレの道はこれしかない!」と確信を持ててる人も存在します。
特に芸術系やスポーツ系の人に多いけど、最近はそういう志で起業家になる人もいるよね。
とはいえそんな人はごく少数。大半の人は 20代で「オレは死ぬまでコレをやっていたい!」と思えることを見極めたりできません。
「やりたいことがわからない」・・・そのほうが普通なんです。
「だいたいこんな仕事が希望」という、ぼんやりした思いがある人を含めても、「やりたいことがわかってる」人は少数派だし、
その頃に「これがやりたい!」的な希望があっても、やってみたら「ぜんぜん違ってた・・」みたいなこともよく起こる。
だから多くの人は、時代や環境(通ってた大学での流行りなど)の影響を受け、「きっと、このあたりの職に就けばいいんだろう」程度の感覚で就職しています。
それを悪いという気は全くありません。
私たちは大半のモノに関してもそうであるように、試行錯誤を繰り返して本当に好きなものを理解します。
食べ物でも(嫌いなものを一切食べずに)「これが好き!」などと言えるようになったりはしません。
洋服でも、家でも、そして、仕事選びでも同じです。
働いてみて初めて「ずっとやりたかったことなのに、コレは違う!」とわかったり、
あれこれ体験して初めて「まったく想像したこともなかったけど、自分はこういう仕事が好きだったんだ!」と驚くようなことが誰にも、そしてしょっちゅう起こるんです。
★★★
加えてその結論は、人生のステージに応じて「大きく変わりうる」というのが私の考えです。
これは、自分の体験でもあり、周りの人を見ていてもよく思います。
20代の時に「バリバリ働きたい!」と思っていたのに、40代半ばになれば「そこまで頑張らなくてもいいや」と思い始める人はたくさんいる。
もちろん反対に、「安定した大企業に入りたい!」という夢を実現し、30代まで粛々と会社員をやってきたけど、40代からいきなりベンチャーや起業の世界に飛び込む人もいます。
大地震などショッキングな事態を目にすれば、より積極的に「今までとは違う生き方をしていきたい」と目が覚めたように思い立つ人もいます。
なにかのきっかけで「このままの働き方で終わりたくない!」と感じるのでしょう。
20代の頃には、「子どもが生まれたら家庭に入りたい」と思っていた女性で、子育ての終わった 40代から、「やっぱり家庭と子育てだけで人生を終わりにしたくない」と考え始める人もいます。
20代、30代では、数年ごとに転職を繰り返してきた人が、40代になって「コレだ!」と思うことに目覚め、周りから「なぜそれを選んだの?」みたいなことに生涯をコミットするケースもあります。
最後の人の例では、一生では十数社(十数個の仕事)を経験しているかもしれないけど、「働き方の種類」としては「あれこれチャレンジしていた時期」と「ひとつにコミットする時期」の 2種類となります。
反対に、特定の一社で 20年ずっと働いてきたけれど(俺が転職するなんて、自分も含め、誰も想像もしていなかっただろうけど!)、
40代半ばから「これからはもっといろんなコトをやってみよう、数年ずつ違うことをやって生きるのも楽しいかも?」と考え始める人もいます。
この場合も、後半で 10個の仕事を経験したとしても、働き方としては「一生でふたつのスタイル」です。
このように誰でも最低 1回は、働き方のスタイルや働くことに対する考え方が大きく変わる時代がくるよと、それが、私が今回の本を書いた背景です。
- 作者: ちきりん
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2013/06/12
- メディア: 単行本
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なぜそういう時代になっていくのかという理由は、本書に書いた通り。時代は私たちが考えているより早く変わるし、加えてみんな、自分自身が大きく変わります。
だから就活中に「やりたいこと」を見つけようなんて、冗談みたいな話です。自己分析なんかで、そんなことが見つけられるわけがない。
だから自分のやりたいことが見つからないからと言って、落ち込む必要も、家にこもって考えこむ必要もありません。
とりあえず目の前にある仕事をやってみて、自分に合っていること、やりたいことは何か、ゆっくりと時間をかけて考えていけばいいんです。
それに、たとえその時点では「わかってる」と思えてる人でも、人生には 2回目の「コレだ!」がありえます。
これが「人生を二回生きる」という考え方です。
だから最初から(20代から)「そうか、一生の間には、最低でもふたつの異なる働き方がありえるんだ。違う働き方をふたつ経験できるんだ」と思っていると、従来型とはまったく異なる人生設計が可能になります。
学生時代の就活に関して、「一生を決める一大事!」などと異常に緊張する必要もないし、結果についてウダウダと悩む必要もありません。
「とりあえず最初の働き方を通して、自分のやりたいことをゆっくり考えよう」と思っていればいいんだから。
そうすれば、数年間、もしくは 10年、20年と働いた後、今までとはちょっと違う気持ちが湧き起ってきた時に、「こんな年齢でオレは何を血迷ってるんだ!?」とか思わず、
「おー、これが、自分が後半人生で実現したい働き方かも!?」と受け止められるようになるはず。
それって素敵なことでしょ!?