ケルト音楽といえばバグパイプ! そんなイメージをお持ちかもしれません。
アイルランドのイリアン・パイプスの甘く物悲しい音色や、スコットランドのハイランド・パイプスの勇壮な音色。バグパイプはまさにケルトっ子憧れの楽器ですね。
私 hataoもバグパイプにあこがれて、何種類もの楽器に手を出しては挫折してしまいました。バグパイプは確かに難しい楽器です……。
バグパイプを始めるハードルや、始めたものの挫折する原因は、つまりこういうことではないでしょうか。
(1) 演奏が難しそうで続けられるかわからないのに、値段が高い。
(2) 買い方がわからない。海外の楽器メーカーと英語でのやりとりが、わずらわしい。
(3) 注文してからの待ち時間が長い。
(4) 近くに先生が見つからない。
(5) リードやバッグのメンテナンスができない。
(6) 音量が大きくて家で練習できない。
(7) 楽器が重たくて持ち運びが疲れるし、何本ものドローンを同時に鳴らすので体力の消耗が激しい。
(8) 伝統音楽の一番重要な楽器だけに、きまりが細かくて厳しそう
思えば、僕にはその全てが原因だったような気がします……。
そこで、皆さんにもバグパイプを手軽に楽しんで頂くために、ドイツのバグパイプ職人 薗田徹さんとの共同開発で、ケルトの笛屋さんオリジナル・モデルの理想のバグパイプを作り上げました。
汎用性が高くどこの地方の曲でも吹けるパイプ、音量が小さいので自宅でもどこでも練習できるパイプ、略して「どこでもパイプス」です! どうして「どこでも」なのでしょう? その理由を、これからお話します。
この楽器は以下の仕様となっています。
・口吹き式(特注により、ふいご式も可能)
・D管(ティン・ホイッスルと同じ。アイリッシュで最も一般的な調です)
音域がソプラノリコ ーダーC管の第一オクターブと同じなので、C管としての使用も可能です。
・D管のティン・ホイッスルとほぼ同じ運指(高音のDでは裏孔を開けます)
・ドローンを3音で切り替え可能(チャンターの1オクターブ下のEとDとCを切り替え可能)
・バッグは茶、赤、緑の3色からお選びいただけます。
・音域は、1オクターブと低音のC(ド)の9度(高音部は追加のキーにより拡張可能)
・クロス・フィンガリングを駆使してすべての半音が演奏可能
フラット系の調も含め演奏できる調性はティン・ホイッスルよりも多いです。
・リードはプラスチック製なのでメンテナンス要らず(調整した状態で出荷します)
・チャンター部分がダブルリード、ドローン部分がシングルリード
スコットランドのスモールパイプとやや似た音色がします。
この楽器のメリットはなんといっても、応用力があるということです。
半音階が演奏できるので、1オクターブの音域であればいくつもの種類の長調/短調が吹けます。C、Am、F、Dm、D、Bm、G、Emなどが得意な調です。
つまり、スコットランド、ブルターニュ、ウェールズ、ガリシアといったケルト圏の曲はもちろん、スウェーデン、ドイツ、チェコのバグパイプ曲など、主音が音域の中ほどにあるタイプのバグパイプのレパートリーや中世やルネサンスの曲であればなんでも吹けちゃいます。
アイルランドのイリアン・パイプスやイングランドのノーサンバーランド・パイプスは2オクターブの音域の楽器ですが、それらのレパートリーの中にも、演奏できる曲がたくさんあります。
さらには、各国バグパイプに特化したチャンターやドローンに差し替えて、別のバグパイプにすることも出来ます。例えば、
・スコティッシュ運指D管チャンター*
・スコティッシュ運指A管チャンターとドローンセット
・セックピーパA/E管、及びG/D管セット
・ヒュンメルヒェン C/d-minor 管チャンター(ソプラノ)*
・ヒュンメルヒェンA/g-minor管チャンター・ドローンセット 等
(*印のついたチャンターでは、基本モデルのドローンがそのままご使用頂けます)
・ピブゴーンと接続してウェリシュ・パイプス
これらの別売アタッチメントに差し替えれば、例えば一本ドローンのスモールパイプスとして、あるいはセックピーパやヒュンメルヒェンはそのものとしての使用も可能になります。
「どこの国の曲でも」演奏ができ、その音量の小ささ、楽器の軽さから、演奏する場所を選ばない。ですから、「どこでもパイプス」なのです!
バグパイプにあこがれ続けたhataoは、このバグパイプのおかげで、晴れて「パイパー」になることができました!今ではコンサートでは必ずパイプを吹いて、楽しんでいます。
また、最初に挙げたハードルは、以下のとおり、すべてクリアできてしまいます!
(1)続けられるか分からないのに、値段が高い。
→楽器としての質は確保しながら、シンプルなデザインを採用することで、お値段はお求め安い10万円台を実現しています。 ※為替相場により変動します。
(2)買い方がわからない。海外の楽器メーカーと英語でのやりとりが、わずらわしい。
→ケルトの笛屋さんが代理店になりますので、英語のやりとりは一切なし。細かな質問やご希望にも対応します。
(3)注文してからの待ち時間が長い
→定番モデルは在庫として常時ストックいたします。
(4)近くに先生が見つからない。
→ほぼティン・ホイッスルと同じ指遣いですので、独習が可能です。メールでのご質問にはケルトの笛屋さんがお答えいたします。また、初級レベルまではケルトの笛のhataoがSkypeなどを使ってオンライン・レッスンをいたします(有料)。近い将来、このバグパイプのための教材や曲集も製作予定です。
(5)メンテナンスができない。
→調整が容易で耐久性の高いプラスティックリードを使用。
その他メンテナンス個々のご相談についてはメーカーの薗田さんと直接ご連絡を取り合って頂くことができます。修理もご依頼になれます。初期不良や破損は無償で保障いたします。
(6)音量が大きくて家で練習できない。
→音量は数あるバグパイプの中でも最小レベル! だいたいリコーダーくらいの音量です。
室内での演奏はもちろん、アンサンブルにも溶け合います。
(7)楽器が重たいし、何本ものドローンを同時に鳴らすので体力の消耗が激しい。
→ベロウ(ふいご)がなく、ドローンが1本だけですので、バグパイプ類の中ではもっとも軽量。
また、ドローンが1本ですので、息の消費量も少なくてすみます。
(8)伝統音楽の一番重要な楽器だけに、きまりが細かくて厳しそう。
→このバグパイプはまったく新しい楽器ですので、誰に気兼ねすることなく、あなたの好きな曲をあなたのスタイルで演奏できます。
バグパイプにあこがれる皆さまには、「どこでもパイプス」からバグパイプの世界に入ってみてはいかがでしょうか。
どこでもパイプスのチャンター音量は、ハイランドパイプス奏者が自宅(室内)での運指練習に使用するプラクティスチャンター、或いは小学校で使うソプラノリコーダーとほぼ同等です。
常識的な範囲で使用している分には、近所迷惑になる音量ではありませんが、24時間練習が可能か否かについては、住環境はもとより、ご本人及び隣人・同居人の感じ方 によっても異なってきますので、状況に合わせてご利用ください。
追加ドローンの組み合わせについて、職人の薗田徹氏より
ドローンは色々な音をいくらでも追加しようと思えばできますが、個人的には、2本かせいぜい3本程度にとどめておき、他のドローンが必要になれば差し替えで対応するのがよいと考えています。実用的に考えれば、標準のD管どこでもパイプスなら、以下の構成がおすすめです。
バス:C/D/E (標準装備ドローン。チャンターのオクターブ下)
バリトン:F/G/A (中間四度・五度。バス・ドローンより少し高い音程)
テナー:C/D/E (チャンターと同じ音域)
通常のどこでもパイプスに二本目を追加するなら、バリトンかテナーがおすすめです。
バリトンを追加すると、GやFの曲で主音との曲で主音と同じドローンの伴奏で演奏できるほか、D&A、C&Gといった五度の和音のドローンでの伴奏が可能になります。五度和音ド ローンは音の厚みと深みが増し、面白いです。但し、どこでもパイプスではCやEの曲も演奏できますが、チャンターはメインのDで純正にしてあるので、D&Aのハーモニーが一番美しく響きます。このため、標準のDチャンターを使用する場合、2本目はAを使う頻度が高くなるでしょう。
一方、スコティッシュ系パイパーの人はバリトンに慣れていない場合が多く、例えばスモ ールパイプスで中間五度のドローンがあってもあまり使わなかったりします。このため、スコティッシュに専念するなら、テナーのC/D/Eを考えても良いと思います。これはバスと テナーを一緒に鳴らし、例えばD&Dのドローン伴奏で演奏する他、高いDドローンだけの 伴奏で演奏するという選択肢もあります。高いDドローンだけの演奏では、ドローンのDが チャンターの主音のDと音高が同じになり、チャンターのその他の音とも周波数が近くなる ため協和度が高くなりますから、チューニングと演奏の高い技術を持った奏者が演奏する と、ハーモニーが非常に美しく響きます。
標準装備のバスドローンよりも4度(A)~5度(G)低いグレート・バス・ドローン追加はできますが、ドローンの音が低くなるにつれ(チャンター音域との乖離が大きくなるにつれ)チューニングの際の唸りが聴き取りづらくなるので、全くの初心者への第一選択としては、あまりお勧めできません。ある程度バグパイプの経験がある方でしたら可能でしょう。
低いドのナチュラルから高いレまで、1オクターブ内の全半音が演奏できるどこでもパイプスの運指表はこちら!
初期モデルから2019年までの大きな改良は以下の3点です。
1. ブローパイプの改良
口吹き式のバグパイプの清潔さを保つためにブローパイプ内の空気の通り道に当たる部分を取り外して丸洗いできる構造にしました。
2. ドローンのC/D/E切り替え対応
試作のモデルはD/E切り替えのみでしたが、現在のモデルはCに対応ができるようになりました。また、2016年10月より、ドローンの先端部分のデザインが若干変更となりました。
3. Eb/Dダブルホール化
2016年10月より、Eb/Dの孔を2つにし、下の手の薬指を半分ずらす方法から2つの孔のうち1つだけ閉じる方法でEb/Dを切り替える方式にしました。
どこでもパイプスをセッション用に改良したモデルが登場!
機能はそのままで、音量が大きくなりセッションやコンサートでも活躍することができます。
チャンターの裏にあいたベントホール(小さな孔)を操作して、第2オクターブの演奏も可能となりました。ドローンに付属した2つの栓を使うことで、ドローンの調をD管やC管に変更したり、ドローンの音を止めることも可能です。ドローン先端を抜くことでE管になります。
スペインのバグパイプ「ガイタ」に似た、明るめな音色で、チャンターの音程は通常の「どこでもパイプス」よりも1オクターブ高い音域です。
標準タイプ「どこでもパイプス」の特注品の例です。こちらはふいご付き、2ドローン、EとF#の2キー付き、チャンターの先端を中世風ベル加工モデルです。
チャンターだけ、バッグだけ、ふいごだけ、リードなど付属品の注文も可能です。参考価格は下記のファイルにてご確認いただけます。
シーズニング液やワックスコードなどメンテナンス用品やオプション品については、個別でお取り寄せ可能です。
個別パーツの輸入には輸入代行手数料、梱包料・送料・保険料が発生します。(上記各一点ずつご注文の場合の重量なら、送料は10ユーロ前後となります)
「どこでもパイプス」は、半音階の演奏+ドローンの音程の変更により様々な調の演奏が可能となります。こちらの楽譜では、アイルランド、スコットランド、ガリシア、スウェーデンの曲をご掲載しています。
なお、これらの曲を含む51曲の「どこでもパイプス」のレパートリーが収録されたダウンロード用楽譜集「どこでもパイプス曲集」はこちらで販売しております。1オクターブで吹ける曲ばかりですので、オカリナにもオススメ♪
ケルトの笛屋さんオリジナル「どこでもパイプス」を隅々までご紹介。
バグパイプの知りたかったあれやこれをひとつひとつ丁寧に解説し、始める前に感じる疑問や不安を解決します。レッスンに通わなくても基礎的な奏法やメンテナンス方法が身につき、バグパイプをより身近なものに感じられるはずです。全6回に分けて、「どこでもパイプス」について、説明します!
第1回「楽器の紹介」
第2回「構え方・音の鳴らし方・止め方」
第3回「ドローンのチューニング・音の変え方」
第4回「指遣い」
第5回「メンテナンス」
第6回「演奏」
2018年6月更新(運指表を説明書内にも記載しました)
職人さん直伝のメンテナンスのマニュアルです。専用の掃除棒をカンタンに自作するための情報も掲載しています。
ピッチに影響を与える「リード」の取り扱いについてのマニュアルを公開しています。