その本の「はじめに」には、著者の「伝えたいこと」がギュッと詰め込まれています。この連載では毎日、おすすめ本の「はじめに」と「目次」をご紹介します。今日は西川満則さん、福村雄一さん、大城京子さん、小島秀樹さんの『 終活の落とし穴(日経プレミアシリーズ) 』です。

【はじめに】

 人生の最期には、数多くの「落とし穴」が潜んでいます。世の中に刊行されている「終活本」で知識や手続きだけを知っても、実際に直面する現実に、そのまま役立つわけではありません。むしろ、準備したつもりになっていることで、大きな落とし穴にはまってしまうこともあるのです。

 たとえば、「親が介護施設に入っているが予想外に費用がかかっているため、その資金を捻出するために親の不動産を売却したい」という相談を受けたことがあります。しかし、親が認知症で介護施設にいる場合、不動産は売却できないことがあります。本人の認知機能が衰えている場合、たとえ家族でも、代理で売却の意思表示をすることは許されないからです。

 つまり、「財産はあるのに現金化できないという落とし穴」に、はまってしまったのです。金銭的な余裕がない方は、施設入居を考えている際には、事前に自宅を売却しておき、その資金で施設に入るのが望ましいのです。施設入居から年月を経ると親の判断力が低下していくことがありますが、そうなってしまうと親の不動産(場合によっては預貯金も!)を動かせなくなってしまうのです。このように、財産はあるのに現金化できないケースは、落とし穴の一つです。

 そのほか、医療面の落とし穴としては、終活をしてこなかったがために、いざ手術や延命治療などの切羽詰まった際に、意思決定を誤ってしまうという点があります。人間は、不安が強い時ほど「良くなるかも」という言葉に反応する傾向にあるようです。ただ、その意思決定が本人や家族にとって最善とは限りません。これが、少しでも早く終活を始めるほうが良いと言われる所以です。

 本書は、これから終活をする方、そして親が終活をする方をメインターゲットに、医療、相続、お金、介護、ACPといった幅広いテーマの落とし穴について解説します。書店では、「エンディングノート本」が販売されておりますが、専門家としてはエンディングノートを書いただけでは不十分と言わざるを得ません。終活を進めるにあたって、他に重要なことはたくさんあります。

 「理想的な最期」とは何か、抗がん剤治療や延命治療はどこまですべきか、医師の提案は拒否してもいいのか、親が認知症になったら何に気をつけるべきか、介護を嫌がる親にどう向き合うか、遺言の作成よりもすべきことは何か等、注意すべき論点を各分野の専門家が解説します。本書が、後悔のない最期を準備する一助となれば幸いです。


【目次】

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