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経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

「年収の壁」を除くとは、こういうこと

2024年11月15日 | 今日の日経
 「年収の壁」を除くには、給付つき税額控除を導入するしかないので、早いところ、そこに行き着いてほしい。所得税の所得控除を上げるのでは全然ダメで、迷走してる場合じゃない。税収を減らす話に、財務省はだんまりなのだから、政治や新聞などの民間が知恵を出さねばならない。導入は、勤労者皆保険にもつながり、年金の給付水準を上げ、少子化の緩和にも資するので、その意義は、とてつもなく大きい。

 「壁」の本質は、一定の収入を超えると、根っこから負担を課してくることによる。図の紺色の線を見れば、100万円のところに壁が立ち上がっているのが分かるだろう。そこで、負担率が30%なのに合わせ、30万円を全所得階層に一律に給付すると、黄色の線へ下方にシフトして、壁がなくなることが見て取れる。

 実は、黄色の線は100万円の所得控除を設け、それを超えた分にだけ税率をかける場合と、まったく同じである。つまり、所得税には「壁」はなく、「壁」になっているのは、所得控除のない社会保険料ということになる。そして、社会保険料に、所得控除の代わりに、定額給付を行う必要があるというのが「壁」の問題の本質なのだ。

 定額給付を全所得階層にするのは、財源がかかり過ぎて、さすがに無理なので、低所得層に絞ってするのが妥当だ。そうすれば、財源も現実的な範囲に収まる。そうした、収入増につれて給付額を減らしていく方法を示したのが緑色の線である。図では、収入の増額に対し、その1/2だけ給付の額が小さくなるようにした例である。

 実際の制度設計は、もっとめんどくさいものであり、一案は以前に示したとおりだが、要するに、どれだけ給付つき税額控除をするかだ。大事なのは、政治や新聞が本質を理解して、細かい設計をするのではなく、そういうものを作って持ってこいと財務省に指示できるかどうかであり、それが「壁」の問題を解くカギになる。

(図)



(今日までの日経)
 基礎年金、給付水準3割底上げ 厚生年金の財源活用。高額療養の負担上限上げ。円、一時155円台。iPhoneからEVの街へ。奨学金の返済、結婚に影響4割。


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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2024-11-15 07:28:20
給付付き税額控除は、結局のところ非正規のパートのみを利する結果となり、低所得の正規社員がメインの若者の所得向上にはつながらないため、玉木代表の案の方に賛成します。何兆円税収が下がろうが関係ありません。
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