ヒヤリハットとは?法則や事例もわかりやすく解説【いまさら聞けないビジネス用語】

ビジネスシーンにおいて、適切な言葉遣いは重要なスキルのひとつ。基本的なビジネス用語を理解していることは、コミュニケーションの円滑化に直結します。本記事では、いまさら人に聞けないけれど、知っておきたいビジネス用語をわかりやすく解説。それぞれの用語が持つ背景や使用されるシチュエーションを押さえておくことで、職場での会話やメールに自信を持てるようになります。今回は「ヒヤリハット」について、その法則や事例も紹介します。
目次
「ヒヤリハット」とは、ヒヤリとしたりハッとしたりする危険を感じた事象のこと
ヒヤリハットは、事故や重大なトラブルには至らなかったものの、ヒヤリとしたり、ハッとするような危険を感じた出来事や事象を指します。これは労働安全や医療、教育はもちろん日常までさまざまな分野で活用される概念で、潜在的な危険を早期に察知し、対策を講じることで重大事故を防ぐための手法として重要視されています。
ヒヤリハットには、「ハインリッヒの法則」と呼ばれる理論が関係しています。これは労働災害や事故の発生における一定の法則性を示した理論で、1931年にアメリカの労働安全の先駆者ハーバート・ウィリアム・ハインリッヒによって提唱されました。
この法則とは、1件の重大事故が起きる背景には29件の軽微な事故があり、さらにその背景に300件のヒヤリハットがあるというものです。比率は絶対的なものではありませんが、「重大事故は突然発生するのではなく、多くの小さな兆候を見逃すことで発生する」という考え方が根底にあります。
ヒヤリハットの特徴
ヒヤリハットにはいくつかの特徴があります。ここでは、よりヒヤリハットについての理解を深められるよう、その特徴について見ていきましょう。
未遂事例であること
すでにご紹介しているように、ヒヤリハットは実際に事故やトラブルには至らず、結果として被害が発生しなかった事例を指します。しかし、潜在的なリスクが存在しているため、同じ状況が繰り返されると重大事故につながる可能性があります。
日常業務で頻繁に発生しうる
ヒヤリハットは、日常の業務や生活の中でしばしば起こる小さな出来事として認識されがちです。そのため、見過ごされることも多いですが、蓄積されると重大事故の原因となる可能性があります。
人的要因が関与していることが多い
多くのヒヤリハットは、人間の不注意や判断ミス、知識不足によって発生していることも知っておくべき特徴のひとつです。ただし、設備や環境が原因となることもあるため、万が一発生した場合は両面から原因を分析することが重要といえるでしょう。
記録や共有が難しい場合がある
軽微な事象であるヒヤリハットは、報告や記録が徹底されないことがあります。また、「大事には至らなかった」という認識から、自発的な報告が行われにくい場合もあり、共有されないことも珍しくありません。
ヒヤリハットの具体例
ヒヤリハットはどのような場面でも起こり得ることですが、どのような事例があるのかを知っておくことが防止につながることもあります。ここでは、さまざまな現場で起きているヒヤリハットについてご紹介します。
医療分野
医療の分野では少しの間違いが大きな事故に発展したり、命に関わってくる可能性があります。看護師が患者に投与する薬を取り違えそうになったけれど、直前で気付いて正しい薬を用意したというのもヒヤリハットの一例です。この対策としては、投与前のダブルチェックやバーコード管理など薬剤の管理システムを導入することなどが挙げられます。
製造業
製造業においてのヒヤリハットの例として、作業者が重機の近くで作業中、重機が予想外に動き、接触しそうになったというものが挙げられます。対策としては、重機周辺の立ち入り禁止区域を明確化し、作業者に注意喚起を徹底することなどがあります。
オフィス業務
オフィス業務でもヒヤリハットの例は複数あります。機密情報を含むメールを送信直前に宛先の誤りに気づいたケースや、BCCに入れるべき宛先をCCに入れてしまったことに送信直前に気づいた場合もヒヤリハットになります。防止策として、メール送信時の確認手順(添付ファイルや宛先チェック)を徹底するなどが重要です。
建設・工事現場
建設や工事現場では危険な作業を伴うことも多く、ヒヤリハットや軽微な事故も起こりやすいといえるでしょう。たとえば高所作業中、足元の工具が落下しそうになったが、作業員が気づいて事前に防げたという例もあります。日頃から作業前の安全点検を義務付けることや、工具を落下防止用のテープで固定することが防止につながるでしょう。
ビジネスでも日常生活でもヒヤリハットから重大事故を防ぐことができる
このように、ヒヤリハットはビジネスやさまざまな現場、そして日常生活でも起きていることです。ヒヤリハットがあった際に、その先の危険を考えて行動したり気をつけるポイントを把握することが大きな事故の予防につながります。
そのためには、報告制度の整備と報告しやすい環境づくりによる情報共有も重要です。少しでも危険だと感じたことがあれば、日頃から意識をして重大事故を防げるようにしましょう。