子宮頸がん
公開日:2016/05/24
最終更新日:2024/09/17

この記事を監修したドクター
東京都立駒込病院 緩和ケア科、東京大学医学部附属病院 届出研究員鶴賀 哲史 先生
目次
20代、30代のこれから妊娠、出産する女性に増えています
子宮頸がんは40代の女性に発症のピークがあります。どの年代も1980年ごろから減少してきたのですが、最近、10代後半から20代という若い世代に子宮頸がんの発症率が増加しつつあります。これは、初めてセックスする年齢が年々低下していることと関係があります。
子宮頸がんの原因とされているのは、HPV(ヒトパピローマウィルス)の感染です。HPVはセックスで感染します。HPVは非常にありふれたウイルスでどこにでもいて、一生のうちで80%の女性は、感染した経験をもっているのです。20歳になったら子宮頸がん検診を受けましょう。
初期には全く自覚症状がありません
どんな検査をしますか?
子宮頸がんの診断には、細胞診と呼ばれる細胞の顕微鏡検査が必須です。子宮がん検診では、この方法で行われます。子宮頸部をスパーテルやブラシといった器具で擦って、細胞をガラスに乗せます。それを染色して顕微鏡で調べます。日本の子宮頸がんの診断率は99%以上という信頼性です。
しかし、これはスクリーニングといって、がんの心配のある人をピックアップするだけです。確定診断ではありません。異形成やがんが疑われる場合には、さらに組織診を行います。コルポスコープ(腟拡大鏡)で確認して、病変と考えられる部分の組織を採取します。この段階で異形成なのか、上皮内がんなのか、浸潤がんなのか区別することができます。
がんと診断がつくと、CTやMRIなどの画像診断を受けます。がんの拡がりをみるためです。リンパ節や他の臓器に転移していないかを確認します。血液検査で腫瘍マーカー検査も行われます。
初期の段階で、がんを発見できれば、ほぼ100%完治します。妊娠や出産にも支障はありません。まずは細胞診を受けることが大切です。
子宮頸がん予防ワクチン
HPV(ヒトパピローマウイルス)には、100種類以上のタイプがあり、このうち15種類前後が子宮頸がんの原因となるハイリスクタイプに分類されています。子宮頸がん予防ワクチンであるHPVワクチンは、ハイリスクタイプに分類されるHPVののうち、主に2種類(16型と18型)の感染による子宮頸がん(扁平上皮がん、腺がん)及び、その前がん病変に対して高い予防効果があるとされています。9種類のHPVに対して予防効果のある9価ワクチンもあります。 子宮頸がん予防ワクチンについて詳しくは、厚生労働省「ヒトパピローマウイルス感染症~子宮頸がん(子宮けいがん)とHPVワクチン~」をご覧ください。ワクチン接種を受けた場合でも、定期的に子宮頸がん検診は受けましょう。
異形成や上皮内がんの場合はどうしたら?
軽度もしくは中等度異形成の場合は、定期的な検診を受けることをお勧めします。そして、細胞の変化を観察します。正常に戻る場合も少なくありません。
高度異形成や上皮内がんの場合は、子宮頸部の円錐切除術を行います。これは、がんの拡がりを確認する検査の意味もあります。切除した断片にがんが認められたら、がんの部分は広いと考えられ、子宮を摘出する手術をすることもあります。円錐切除術を受けた場合、子宮の入り口が切除されるので、妊娠中に子宮口が広がりやすくなることがあります。
子宮頸がんの治療は?
進行したがんでは、広汎性子宮全摘出術が行われます。この手術は子宮だけでなく、子宮結合組織(子宮の周りの組織)や骨盤内のリンパ節を摘出します。場合によっては、放射線治療や化学療法を選択します。卵巣は温存できる場合もあります。
子宮の摘出術を受けると、子宮を失ったことで女性としてのアイデンティティが揺らぎ、自信を失う女性もいます。子宮がなくなっても女性であることに変わりありません。
広汎性子宮全摘出術を受けた場合は、術後の後遺症として、排尿障害やリンパ浮腫が起こることがあります。リンパ浮腫の患者会もあり、助け合いの輪が広がっています。患者会ではスキンケア、マッサージ、圧迫した状態での運動などを勧めています。
さらに詳しい情報は『がん情報サービス』「子宮頸がん」をご覧ください。
http://ganjoho.jp/public/cancer/cervix_uteri/index.html
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