江戸時代の18世紀末、長崎の出島に着任したオランダ商館長イサーク・ティチング(1745~1812年)が作った、最古の蘭和対訳会話集が古物市場で見つかった。 日本人通詞(通訳)同士の会話が和文(ローマ字)とオランダ語で記され、当時の生きた話し言葉を伝える貴重な資料だ。 オランダ東インド会社に勤務したティチングは1779年から84年までの間に商館長を2期3年務めた。会話集はこの間に、仏蘭会話集を参考にティチングが構成し、親交が深かった日本人通詞、堀伝之丞が墨でつづったものとされる。 和紙を袋とじし、厚紙で装丁され、縦18・5センチ、横13・5センチ。1文目の「私どもの正月より12月までの事につき、二人寄り合い話」から93の蘭文が27枚、和文が22枚に記される。新年に酒を飲みながらよもやま話を繰り広げる形で、様々な例文を挙げる。時刻の表現など両国の文化の違いが浮かび上がる内容になっている。