沖縄や生活史が専門の社会学者であり、最近は小説も好評を博する岸政彦さんと、芸人としての活躍はもちろん、小説家としても『火花』『劇場』と話題作を刊行してきた又吉直樹さん。神楽坂la kaguで行われたお二人の対談を二号にわたりおとどけします。 *** 岸 『劇場』が文庫になりましたが、映画化も決まったんですね。 又吉 山崎賢人さんと松岡茉優さんが出演して、来年公開の予定です。 岸 原作者としてカメオ出演とかなさるんですか。 又吉 いえ、まったくお声がかからなかったです(笑)。僕が出ても邪魔になるでしょうし。 岸 『劇場』、読ませていただいて最初におっと思ったのが、飲み会で主人公の永田がほかの劇団員ともめる場面で、劇団員の辻という男の描写があって、〈地味な男だったが、特徴のある高い声をしていて、どうしようもなく目立つ時があり、よく芝居の邪魔になった〉。こういうテクニカルな描写が僕はすごく好きな