「自分の身を守るために、ほかに方法がない時にしか争ってはいけない。そして戦うなら、左手のみ。利き手の右は絶対に使わないこと」。少年の父親は常にこう諭しながら、彼にテコンドーの特訓をしていたそうです。 この15歳になる少年は、数年前に家族とともに韓国からカナダに移住してきました。トロント北部にあるオンタリオ州ケスウィックという小さな町に住み始めたのですが、ここの住民はほとんどが白人。アジア系はあまりいないそうです。いま、少年が通っている高校もアジア系の生徒は10人にも達しません。そして残念なことにマイノリティである彼らは、イジメのターゲットにもなりやすかったのです。 ある日の体育の時間。白人の生徒が少年に向かって人種差別的な悪口を叫びました。彼に近寄るとケンカ腰になり、肩もぶつけてきます。それでも少年は父親の“教え”を守って、手出しをせずに黙っていました。 しかし、今度は顔をめがけて殴りかか