ヨハネスブルグは晩秋のただ中にあった。香港から搭乗してきた半そで姿の中国人は、みな一様に身をすくめている。東京でいえば10月下旬くらいの寒さであろうか。 ふと『冬の運動会』という小説を思い出した。直木賞作家であり、ドラマの脚本家としても有名だった向田邦子の作品で、最近でもテレビドラマ化されたと記憶する。小説の中身についてはあえて触れないが、「冬」と「運動会」とのミスマッチが何とも心に響くタイトルであった。なぜそんなことを思い出したかというと、来年、この地で開催されるワールドカップ(W杯)が「冬のW杯」となることを、あらためて実感したからだ。 多くの人々にとってW杯といえば、4年に一度の「夏の祭典」というイメージが強烈に残っているはずだ。2006年6月12日のカイザースラウテルンでの屈辱(オーストラリア戦)、02年6月9日の横浜での狂喜乱舞(ロシア戦)、そして98年6月14日のトゥールー