「来る者拒まず、去る者追わず。お金にも執着しないし、常にドア全開で寄ってくる人は誰でも受け入れてしまう」と乙川弘文について語る柳田由紀子氏 アップルコンピュータ(現アップル)の共同設立者として、またiMacやiPhoneの生みの親として、文字どおり"技術で世界を変えた男"スティーブ・ジョブズ。若き日に「禅」と出会い、そこから多大な影響を受けたといわれるジョブズが、「生涯の師」と仰いだのが乙川弘文(おとがわ・こうぶん)という日本人僧侶だった。 遠い異国の地で、純粋に禅と向き合い続けた弘文の数奇な人生と、その教えに惹(ひ)きつけられたジョブズとの関わりを、8年にわたる取材で丹念に描き出したのが、柳田由紀子氏の著書『宿無し弘文 スティーブ・ジョブズの禅僧』(集英社インターナショナル)だ。 * * * ──スティーブ・ジョブズが禅の「師」と仰いだ人物が、これほど破天荒なお坊さんだとは知りませんでし