英国でもキャッシュレス化が進むなか、ホームレスの人々が危機感を募らせている。「ごめんなさい、お金はもっていないの」──。そんな言葉はホームレスだけでなく、移民や低所得者層といった既存の金融システムの外側にいる社会的弱者にとって、極めて大きな意味をもち始めた。 いまから4年前、ナタリーが初めてホームレス状態になったとき、人々はいまよりもっと気前がよかったはずだ。ロンドン北部育ちの27歳の彼女は、ボーイフレンドと破局した2014年に路上に住み着いた。2015年になってホステルに居場所を得たものの、議会の決定で賃料が上がったことにより支払いが滞り、今年になって再びホームレス状態になった。 ナタリーには気づいたことがあった。「小銭をもっていないんです」と謝られることが次第に増えてきたのだ。「かつては恵んでいただくことが多かったと思います。当時の夏は、今年の冬より収入が多かったですね」とナタリーは言