西洋中世の哲学者トマス・アクィナス(1225年頃~74年)の主著『神学大全』の邦訳(創文社)が、1960年の刊行開始から52年かけてようやく完結した。 全39冊(訳者の巻立てで45巻、合本含む)。 『神学大全』はキリスト教世界最大の古典の一つ。神、人間、キリストを論じた3部から成り、大著であるがゆえに大聖堂にもたとえられる。 邦訳は京大教授だった高田三郎さん(故人)を中心に始まったが、厳密な翻訳を貫いたことや、翻訳者が途中で死去したことなどで大幅に遅れ、結局、九大名誉教授の稲垣良典さん(84)=写真=が全体の約半分を担当して完結させた。翻訳者は15人に上った。 これだけの大著だが、稲垣さんは「神を敬い、神に奉仕し、神に近づいていくための道、つまり“神道”の本だ」と強調する。「人間は人生を歩む中で変化していくもので、最高の幸福は神を見ることであり、神に近づくには人間精神が神と親近性を帯びてい