◇与良正男(よら・まさお=毎日新聞論説副委員長) 臨時国会の論戦がようやく始まった。10月28日の所信表明演説で野田佳彦首相が与野党に呼びかけたように、「政治家の覚悟と器量が問われる」国会だ。しかし、東日本大震災の復旧・復興や東電福島第1原発事故の収束、あるいは現下の円高対策にとどまらず、この国の将来を見すえて、首相本人や与野党議員が覚悟を示す論戦になっているだろうか。残念ながら答えはノーだ。 演説も答弁も、野田首相が分かりやすい言葉で丁寧に語っている点は認める。だが、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の参加問題など肝心な話となると、「しっかり議論を」と言うだけで、自らの考えはいまだに鮮明にしようとしない。 一方、野党・自民党の谷垣禎一総裁の考えや姿勢も決して明確ではない。互いに一枚岩でない党内事情を抱え、主張したくてもできないという内向きな状況が続く。 そんな中で、今回は主に自民党側