「ものづくり」という言葉が日本の製造業の強さとして、さかんに世の中で言われるようになったのは1990年代後半のこと。団塊の世代がいっせいに定年を迎える「2007年問題」が取り上げられ、技術の継承が危ぶまれたこともあって注目をあびるキーワードとして浮上した。だが世間の耳目を集めたときにはすでに遅かったらしく、そのとき技術者たちは日本の製造業の隅へと追いやられた後だった。俳人で著作家の日野百草氏が、日本の「ものづくり」がどのようにして弱体化させられたのか、製造業の技術者として働いていた人たちが現場で見たことを聞いた。 * * * 「よいものを作れば評価される時代がありました。それが儲かるだけのものに変わり、インチキしか作れなくなり、最後は関係ない仕事をしていました」 筆者が教えるシニア向けの趣味サークルで語ってくれたのは70代の元技術者、出会った当時、といっても4、5年前だが「あの製品は私も手