福島市の市街地。東京電力福島補償相談センターに、福島県飯舘村長泥地区の区長、鴫原(しげはら)良友さん(62)は1月下旬から3回、足を運んだ。そして、3回目に声を荒げてしまった。 「なぜ、来るたびに担当者がコロコロ変わってしまうのか。こちらは毎回同じ話を説明している。前に進まないでしょう」 鴫原さんは、地区の住民180人を代表していた。交渉の案件は原発事故の賠償をめぐるものだ。 鴫原さんの長泥地区は放射線量が高く長期間、住民が戻るのが難しい「帰還困難区域」に飯舘村の中で唯一指定されている。事故後1か月以上避難区域に指定されず避難も遅れた。被曝による将来の健康不安に対する慰謝料の支払いなどを求め平成24年7月に申し立てを行った。事故から1年4カ月が経過していた。申し立てからはちょうど1年半。鴫原さんは、まだ声を荒げている。 申し立てた先は、裁判所ではない。案件が多く、被災者のために迅速に解決す
