1.認知科学とは 認知科学(Cognitive Science)とは,「心とは何か,心はどのように働くのか」という疑問を追求する学問分野のひとつであり,1970年代から学問分野としてのアイデンティティを確立し始めた比較的若い学問である。歴史的には心理学,情報科学,神経生理学,言語学,人類学などの諸学問の学際領域から発展してきたものであり,その萌芽は1930年代にまで遡ることができる。 認知科学が基盤とする方法論は「モデルによる理解」である。我々人間が行い得る「知的行為」が,これこれの心的表象をこれこれの形式で計算操作すると,そうした行動が生み出されると説明できる「認知モデル」を構築することが,認知科学の中心課題である。このモデルの妥当性は,心理学的な実験との整合性,神経生理学的な知見との整合性,モデルに基づいて構成される情報システムの実効性の観点から評価される。 しかし「心とは何か」という