物質なのに自然淘汰が働く? ウイルスは、他の生物の細胞を利用して、自分を複製させる物質である、とよく言われる。これは間違いではないが、ウイルスの説明としては不十分だ。正確には、ウイルスは、他の生物の細胞を利用して、自分の複製をたくさん複製させる物質である。もしも、自分が消滅して、代わりに複製を1つ作るのならば、それはウイルスにならない。なぜなら、その場合はウイルスが増えないので、自然淘汰が働かないからだ。 生物には自然淘汰が働くが、物質には自然淘汰が働かないことが普通である(もちろん生物も物質でできているけれど、本稿では「物質」は「非生物」という意味で使うことにする)。ところがウイルスは、物質なのに自然淘汰が働くめずらしい存在なのである。 物質とウイルスの境界 ここでウイルスを物質と言ってしまったが、ウイルスを生物とするか非生物とするかは、人によって意見が異なる。ウイルスは、生物と非生物の
