私は、研究者としての40年の間に、たくさんの文章を書いてきた。いわゆる「学術論文」と言われるものから、雑誌のコラム・エッセイまで含めるとその数は数百になるかもしれない。しかし、本当に自分でよくできたと言えるものはほとんどない。できるなら抹殺したいと思うようなものばかりである(一旦社会に出たものは抹殺することはできない。ただし、自分のそばから消すことはできるので、ぜんぶ処分した)。しかし、次の小論は、珍しく自分が気に入っているものである(2002年にローカルな雑誌に書いたものなのであまり人目に触れていないかもしれない)。 私は小学校の国語で教材になっている「ごんぎつね」という作品がたまらなく嫌いだ。これがこの小論を書いた動機である。この小論に対しては、あちらこちらから口伝えでは賞賛と批判の声が聞こえてきた。ただし、文章による評価や批判はなかった。今は考えが少し変わってきている(とくに第3校の
