『あなたの話はなぜ「通じない」のか』(山田ズーニー著・ちくま文庫)より。 【日本に暮らす私たちが、省いたり、ぼやかしたりするものが主語の他にもまだある。 感冶課長「請求書は、できるだけ早く提出してください」 論田くん「できるだけ早くって、いつまでですか?」 感冶課長「できるだけ早くだ。総務は急いでるんだ」 論田くん「あの、何月何日の何時まででしょうか? 外注先にいま、お盆休みを取っている会社があり、17日の朝9時にならないと連絡がとれないのです」 感冶課長「できるだけ急いでもらってくれ」 論田くん「…………。では、質問を変えます。8月17日の10時までになら提出できますが、これでは遅いでしょうか?」 感冶課長「……。総務に聞いてみる」 感冶課長(戻ってきて)「論田、提出の期限は18日中だそうだ」 これは、業務連絡に日時がないことがネックだとすぐわかる。「できるだけ早く」は人によって「1時間