96年、97年頃の黒沢はとにかく多忙を極めた。監督としての長編映画の仕事は年間4本か5本はザラで、それ以外にもテレビ用の短編作品も手がけていた。今振り返れば、黒沢にとってプログラム・ピクチュアの幸福な時代は既にほぼ終わりに近づいていたのだが、オファーのあった仕事は断らない誠実な仕事ぶりが内外で驚嘆されていた時代でもあった。またしても関西テレビの田中猛彦プロデューサーのオファーで、全3話の『学校の怪談』シリーズの最新作である『学校の怪談f』の話が持ちかけられる。全3話のドラマのうち、第1話と第2話は『リング』の中田秀夫が担当。第3話の26分間を黒沢が担当した。このドラマは制作会議をする時間がなく、脚本家である大久保智康が『CURE』の合間に打ち合わせをしていたのはあまりにも有名なエピソードである。その大久保は『CURE』のエキストラとしても、何シーンも通行人役をやらされたらしい 笑。 30年