あの頃は「ブラック」だった。黒いアメリカの最も熱い季節。 はじめは、当の黒人たちも「なんのこっちゃ」という感じだったらしい。 「ブラック」という呼称のことだ。 本国アメリカではさりげなく忌避され「アフリカン・アメリカン」というタームに道を譲っている「ブラック」という表現だが、我々日本人にとっても、世界各国の皆さんにとっても、アメリカ黒人をブラックと呼ぶのは、まだまだごく普通のことだ。イギリス人も使っているようだし。それほどに根づいている呼び方である。 しかし、吉田ルイ子先生の著書『ハーレムの熱い日々』を読むと・・・・・・60年代のニューヨーク、黒人街ハーレムでは「え? ブラックって、俺たちのこと?」という感じだったとか。なぜって、それまでは「カラード」と「ニグロ」だったから。 ニグロは、ラテン語で黒の意味。一方、カラードとは文字通りに解釈するなら「有色人種」だが、字面に騙されてはいけない(