「栄養摂取を目的とせず、香味や刺激を得るための飲食物」とされる嗜好品。 そうした“不必要”性こそが、嗜好品「ならでは」の果たせる役割、すなわち「われわれ」を生み出すことにつながる──今回インタビューした、哲学者の朱喜哲(ちゅ ひちょる)さんはそう語る。 さまざまな分断が露わになり、「われわれ」と「あの人たち」の溝が日々深まっているように感じている人も少なくないのではないか。あらゆる壁や差異を超えた「連帯」は夢物語へと消え、「ばらばらである」ということを受け入れなければならない。昨今の世界は、そんな風に語っているようにも思える。 こうした現実を前に、朱さんは「嗜好品」に「連帯」の契機を見出す。 プラグマティズム言語学を専門とし、アメリカの哲学者リチャード・ローティを中心に研究活動を展開する朱さんは、「いまこそ、嗜好品を『われわれ』を広げるものとして捉え直す必要がある」と語る。 自らも酒場をこ
