5月の連載では、90年代以降顕著なミュージアム建築のブランド化についてとりあげた。けれど一方で、ミュージアムが洗練された現代建築を必要とするようになったのは、なにも高度資本主義社会の側面からのみ説明されるわけでもないだろう。そこで、今回はミュージアムと儀礼という側面からミュージアム建築について考えてみたい。 ミュージアムが与える真正さ/神聖さ 前回に引き続いて話を美術館に絞って進めたい。そもそも、芸術作品を芸術作品たらしめるものとは何か? この問いの答えはいろいろあろうが、ひとつ言えるのは、芸術作品を作品たらしめる構造そのものである。言い換えれば、作品を作品として理解しようとするから、それは芸術作品なのである。そして、芸術作品を成立させる外部環境として重要な役割を果たしてきたのが、作品を日常的な空間から隔離し芸術作品として鑑賞させる空間≒ミュージアムなのであり、ミュージアム建築そのものもま