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今年の「#文学」
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手足の切断、外見の変形、脳の損傷……。彼らは人生が一変する傷を負い、この何万人もの死者を出している戦争を生き延びた。 彼らがガザを脱出し、治療のためにたどり着いたカタールで、米紙「ニューヨーク・タイムズ」はその姿を撮影し、話を聞いた。 一命をとりとめ、生き残ることができたけど、このまま生き続けたいのかどうかわからないという子供もいる。 もぎ取られた腕が、流し台の中に マフムード・アジュール(9)の家族は、イスラエル軍の砲撃が始まったときに家から逃げ出した。だが母親のヌールによれば、みんなの動きが遅かったので、マフムードが家に戻り、急ぐように言ったという。 そこに爆発が起きた。片腕がもぎ取られ、もう一方の腕もずたずたになったマフムードは、逃げ遅れそうな家族に言った。 「僕のことは置いていってほしい、僕はここで死ぬんだ」
政府が年度内の策定を目指す新たな「エネルギー基本計画」では、「原発依存度を可能な限り低減する」という表記が削除され、原発を「最大限活用する」と明記されることが明らかになった。一方、今年の元旦に起こった能登半島地震により、国民の原発への不安は再燃したままだ。 米紙「ニューヨーク・タイムズ」は、能登半島地震で原発が被害を受けた石川県志賀町を取材。原発をめぐる住民たちの複雑な思いを報じている。 原発への恐怖、再び 2022年、史上最悪の原子力災害のひとつとされる福島第一原発事故から10年以上が経ち、日本はついに原子力発電を再開しようとしていた。 当時、日本国民の過半数以上は原発再稼働への支持を表明しはじめていた。2011年に福島県で地震・津波を原因とする原発のメルトダウンが発生して以来、日本の原発のほとんどは停止状態にあった。自民党は休止中の原発を再稼働させるのみならず、新たな原発の建設計画をも
川村美術館閉館の余波 DICが川村美術館の閉館を発表して以降、いくつかの変化があった。1つ目は、休館という報道を見聞きした多くの人が、日本が誇るお宝を目にできる日はもうあまり残されていないと大慌てしたことだ。その大半は、同美術館を訪ねてみようと思ったことなど一度もないのに、いまこそ出向かねばと考えた。 2つ目は、休館という決断に強く反対する声が上がったことだ。美術館周辺の道路沿いには「休館しないで」と書かれた看板がいくつも設置され、地元・佐倉市役所の公式サイトでは存続を求めるオンライン署名活動が始まった。12月6日までに、5万8131件の署名が集まっている。 3つ目としては、日本を一変させうる事態が起きた。DICのような企業が日本にはほかにどのくらい隠れているのかと、投資家の関心が集中したのだ。社会的に問題をはらむこの手の宝探しをいまや専門とし、本紙がここ数ヵ月ほど話を聞いている複数のヘッ
エヌビディアのジェンスン・フアンCEO Photo by Lachlan Cunningham / Getty Images エヌビディアを時価総額世界一にした男の秘密 世界で最も時価総額の高い企業の一つを築いた男は毎朝、電子メールの受信トレイをスクロールし、その日で最も重要な100通に目を通す。そして日曜の夜には、お気に入りのスコッチウイスキーを1杯注ぎ、さらに多くのメールを読む。 米半導体大手エヌビディアの従業員は「T5T」(Top-5 Things=最も重要な五つのこと)として知られるメモを書いてきた。自身が取り組んでいること、考えていること、事業の各分野で気づいたことをつづったものだ。 そして何十年もの間、ジェンスン・フアン氏はそれを全て読んできた。
敷地の50%を農地に オランダ郊外の町に住むマルコが新鮮な食材を調達するのに、わざわざ遠くのスーパーまで行く必要はない。彼の家のすぐ外には800平方メートルの区画があり、リンゴ、ナシ、ピーマン、バジル、ビーツ、カリフラワーなど、さまざまな作物が育っている。 冬の間、彼と妻は冷凍庫に保存された野菜だけでほとんど生活できてしまう。「昨日、食事のことを考えるのを忘れていました」と彼は言う。「庭を歩き回り、何か作物を見つけて、それがその日の食事になるのです」 2017年からマルコが住むオースターヴォルドは、アムステルダムの東、アルメレ市の郊外にある4300ヘクタールの都市実験地区だ。アルメレで市議会議員を務める彼が暮らすこの地区は、約10年前に構想された。 英紙「ガーディアン」によると、この地域には約5000人の住民が住んでいるが、人気は高まり、住みたい人が登録する待機リストは長くなっている。この
企業が保有する美術品は誰のもの? 2024年9月も終わりにさしかかった週末の午前、千葉県佐倉市の川村記念美術館(インキ大手DIC運営)では、脇道にある入場券売り場に長蛇の列ができていた。美術館前の並木道には車が列をなして、第2駐車場の空車待ちをしている。 館内のギフトショップは、このところ人が殺到したために休業中だ。まだ11時45分だというのに、併設されたレストラン「ベルヴェデーレ」入口前のスクリーンには「待ち時間181分」の文字。美術館の公式サイトは「弁当の持参」を呼びかけている。 川村記念美術館は2024年8月27日、2025年1月下旬をもって休館することを発表した。すると、これは一大事だと慌てた芸術愛好家らが、のどかな地区にある同美術館に大挙して押し寄せた。しかし、芸術愛好家とは比較にならないほどこの事態を重く受け止めているのが、多くの日本企業だ。 知名度が高いとは決して言えない川村
※本記事は、関卓中『地球上の中華料理店をめぐる冒険』の抜粋です。 これは私の「東京物語」である。 日本という国を初めて実際に目にしたのは、横浜港に入っていく客船の上からだった。時は1965年8月。1年前から東京に赴任していた父と合流するために、私は母、妹とともに香港を離れ、4日間の船旅の末に日本にやってきたのだった。前年に東京オリンピックが開催され、父は体操競技を観戦したと興奮ぎみに語っていた。 私たちは、4日前の真夜中に香港のビクトリアハーバーを出港した。港には、友人たちが見送りに来てくれた。当時、私は14歳。次に会えるのはいつになるのかわからない。夜の闇に消えゆく街の灯を見ていると、早くも友達と会えなくなる寂しさが込み上げてきた。 移住はこれが初めてではない。生まれは香港だが、生後10ヵ月にして祖母の腕に抱かれてプロペラ機でシンガポールに移った。12年後には、貿易会社に勤めていた父が香
「カシオ」の最新AIロボット「モフリン」の面倒を見ることになった英「ガーディアン」紙の記者。最初は最低限しか相手にしていなかった記者だが、徐々に愛着が湧いてきて──。 フワフワの小さなスリッパの片方に見えなくもない。キーキーと鳴き、身をくねらせ、手のひらのなかで丸くなる。黒い目が、銀白色の毛の下に隠れている。重さは缶入りスープと同じくらい。食事や散歩の必要もなく、ペット用トイレも使わない。家のドアの上がり口に“プレゼント”を残すことがないのも非常に素晴らしい。なぜなら、それはもうすぐペットとして我が家にやってくるからだ。 日本製の最新AIコンパニオンロボット「Moflin」(モフリン)の世話を託される前、家電メーカーの「カシオ」東京本社で同ロボットの開発者らと会った。カシオは11月7日、モフリンを発売した(価格は5万9400円)。「人との関係を築くのがモフリンの役目」だと同社企画担当の市川
ますます拡大するインバウンド市場。外国人観光客の目的地は、日本旅行の定番である東京・京都から地方へと移りつつある。なかでも、世界遺産・白川郷の合掌造りで知られる岐阜県白川村には、年間100万人を超える外国人観光客が押し寄せるという。現地では今、何が起きているのか。白川村役場観光振興課、小瀬智之課長補佐より話を聞いた。 人口の1000倍の観光客が訪れる村 ──外国人観光客は、いつごろから増加しましたか? 小瀬 大きなきっかけは世界遺産に登録された1995年ですが、ここ10年ほどで飛躍的に増加しました。2013年の外国人観光客の年間訪問者数は15万人で、全訪問者の1割程度。しかし、2019年には100万人を超えました。 外国人観光客の国籍も多様化しています。以前は台湾やタイなどアジア圏の方が多くを占めていましたが、現在は欧州や南米など多種多様な地域からいらっしゃっています。
ひと昔前まで、海外で「日本食」といえば「寿司」一択だったが、近年ではラーメンが世界中の人々の心を捉えてやまない。スペイン「エル・パイス」紙の記者が、そんなラーメンファンのために情熱を持って、東京のラーメン店を紹介する。 日本のどんなごちそうも、国民食の称号を「寿司」と争うことはできない。だが、おいしい一杯のラーメンからは、食習慣、 歴史、経済、そして過去70年間のニッポンのポップカルチャーまでが垣間見える。 ピザ、タコスそのほかのお手頃で万能な世界のファーストフードと比較されるラーメンは、カロリーと塩分を美味しく補給して体力補充できる、日本人の大好物だ。一杯は10分とかからずに完食できる。だが俳句や相撲の取組といった、束の間を楽しむ日本のそのほかの文化形態と同じように、ラーメンはじっくりと手間暇かけた準備を必要とする。 体力回復に効くスープは「うま味」に富んでいる。ラーメンには、地域に結び
世界中の大人たちが苦戦 先進国の5人に1人は、数的思考力と読解力に関して、10歳程度の子供たちに求められる以上の能力を有していない──経済協力開発機構(OECD)が10年ごとにおこなう「国際成人力調査」から、そんなショッキングな事実が明らかになった。 OECDは38の加盟国のうち、31ヵ国に住む16~65歳の約16万人を対象に「数的思考力」、「読解力」、「問題解決力」の3つを調査し、12月10日に結果を公表した。 OECDは報告書で、「ほとんどの加盟国において、大人たちの数的思考力と読解力は、過去10年間に大幅に低下したか横ばいの状態にある」と結論づけた。とくに読解力の低下が著しく、大幅な向上が見られたのはフィンランドとデンマークの2国のみだった。 フィンランドは読解力のみならず、全3分野で1位だった。日本は読解力と数的思考力で2位、問題解決能力ではフィンランドと並んで1位だった。他にも、
2024年、フランスで合弁会社を設立し、本格的なヨーロッパ進出に出たKADOKAWA。まだフランスでの知名度は高くないというが、仏誌「ル・ポワン」は、CEO夏野剛へのインタビューを掲載し、フランスの読者に同社を紹介する。 日本を代表する出版グループ、KADOKAWA。フランスではまだあまりその名は知られていないが、同社は全世界で7000人の従業員を抱え、年間売上高は20億ドル(註:2024年3月期の年間売上高は約2580億円)に上る企業だ。 24時間のフランス滞在中、取材に応じたKADOKAWAグループのCEO夏野剛(なつの・たけし)は、完璧な英語でこう説明する。「KADOKAWAは日本の出版業界の4強の一社です。他社に比べると、実写映像・アニメ、映画製作、動画プラットフォーム、ゲーム、オンライン教育など、多角的な事業展開をしています」。彼はNTTドコモの元幹部で、株式会社ドワンゴでもCE
K-POPアイドル推し活用のライトスティックを振りながら、尹錫悦大統領の弾劾を求める若者たち Photo: Ezra Acayan / Getty Images 大音量で流れるK-POPミュージック、ライトスティック、フードトラック、そしてお決まりの自撮り──。韓国で尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が12月3日に戒厳令を宣言して以降、国中で増えているデモが、意外なほどお祭りムードになっている。 10日夜、首都ソウルにある国会議事堂の外では、通り沿いにフードトラックが立ち並び、トッポギ(辛い餅炒め)やスンデ(血のソーセージ)、冬の楽しみであるポンテギ(茹で蚕)など昔ながらの軽食を売っている。 おもに若い女性のデモ参加者たちが振っているのが、ライトスティックだ。これは高価なLED機器であり、もっぱらK-POPのコンサートで推しのアイドルを応援するときに使われる。それぞれ異なるファン界に属してい
この数年のあいだで、英国の書店に入ったことがある人は気づいたはずだ。日本の小説が空前のブームであることに──。 日本の小説は、2022年の英国における翻訳小説すべての売上高の25%を占めたことが書籍売り上げデータサービス「ニールセン・ブックスキャン」の数字からわかっている。 その優勢は2024年、さらに目立っている。ガーディアンが入手した数字によれば、2024年の翻訳小説売り上げトップ40作品の43%が日本の小説だ。その第1位を飾ったのも、柚木麻子による、風刺的で社会意識の高い犯罪小説『Butter』(原題も『BUTTER』)だった。 『Butter』は2024年の「Books Are My Bag」読者賞のブレイクスルー作家賞も受賞した。この読者賞は書店が選書し、消費者が投票して決められる。 英国での現代日本小説の人気ぶりは、もちろん新しい現象ではない。しかし、英国で多種多様な日本人作家
米国では多くの学生がまもなく期末試験を終え、冬休みに入る。そんななか、母国に帰省する留学生や海外出身の教職員に対し、多くの大学が2025年1月20日のドナルド・トランプの大統領就任までに帰国し、大学に戻るよう勧告している。 米「ニューヨーク・タイムズ」はトランプが前政権時代、イスラム教徒が多数を占める7つの国からの入国に制限を課し、当時海外にいた数千人の学生が足止めにあったと伝える。その後、彼は渡航制限リストにさらに多くの国を加えた。トランプはホワイトハウスに戻り次第、これらの制限を復活させたいと明らかにしている。 「就任後すぐに渡航制限が発効されるだろう」とコーネル大学のグローバル・ラーニング・オフィスは11月、ウェブサイトに掲載した。「入国禁止令は、トランプの第一次政権で対象になった国々(キルギス、ナイジェリア、ミャンマー、スーダン、タンザニア、イラン、リビア、北朝鮮、シリア、ベネズエ
近年の円安に伴い、買春目的の訪日外国人客が増えているという。彼らが目指すのは、多くの少女たちが「客待ち」をしていることで知られる東京・歌舞伎町の大久保公園だ。「そのうち誰かが殺されてもおかしくない」と関係者が心配するほど危険な少女たちの日常を、香港紙「サウス・チャイナ・モーニング・ポスト」が取材した。 一般社団法人「青少年を守る父母の連絡協議会(青母連)」事務局長の田中芳秀は、「日本は貧しい国になってしまいました」と本紙に語る。 同団体の事務所の近くには、東京の売春産業の中心地である大久保公園がある。そこでは若い女性が、まだ日没前にもかかわらず客待ちをしている。 青母連によれば、コロナ禍による入国規制が撤廃されると、この公園を訪れる外国人の数が増えはじめたという。 「いまはその頃よりも、はるかに多くの外国人男性がやってきます。さまざまな国・地域から来ていますが、多いのは中国系です」と田中は
スウェーデンで「ソフトガール」と呼ばれるトレンドが物議を醸している。 ソフトガールは、TikTok発のトレンドで、キャリアの追求よりもスローダウン(ゆったり生きること)、セルフケア、そしてウェルビーイング(健康で充実した状態)を重視する精神性を指す。 このトレンドは数年前から各国で話題になっていたが、スウェーデンでは「女性が仕事を辞めて、男性パートナーに経済的に依存するライフスタイル」として広がっており、議論を巻き起こしている。 というのも、男女平等の先進国としてのスウェーデンのイメージとは対照的な動きだからだ。 スウェーデンの代表的なソフトガールのひとりである、インフルエンサーのヴィルマ・ラーション(25)は、以前は、食料品店や介護施設で働いていたが、1年ほど前に仕事を辞めた。
米誌の消費者調査で信頼度No.1に輝いたのはスバルだった Photo: Fatih Aktas / Anadolu / Getty Images 「ハイブリッド車の信頼度はガソリン車とほぼ同等」 米誌「コンシューマー・レポート」による最新調査によれば、2024年は電気自動車(EV)とプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)の信頼性が大幅に伸び、ガソリン車との差が縮まったことがわかった。 同調査では、EVはガソリン車よりも平均して42%多くの問題があったという。だが、2023年度の79%に比べ、大きな改善がみられた。 コンシューマー・レポートで自動車テストのシニア・ディレクターを務めるジェイク・フィッシャーは、「EVとPHEVの技術は成熟しつつある」と米紙「ワシントン・ポスト」に語っている。 自動車メーカーは新しい自動運転技術やその他の機能をEVでテストすることが多く、新しいモデルには不具合が
マイクロソフトのサティア・ナデラCEOが、仏誌「ル・ポワン」の取材に応じ、活況を呈するAIについて語った。 2022年11月に発表されたOpenAI のChatGPTは、公開後わずか5日で100万人のユーザーを獲得した。これに先立つ2019年、グーグル、メタ、アマゾンといった大手テックがOpenAIを過小評価していたころ、ナデラは同社に10億ドルという多額の投資をしていた。 危機に陥ったマイクロソフトを、時価総額で世界3位にまで成長させたインド出身のエンジニアは、どんな未来を予見していたのだろうか。 誰でも「AI教師」がいる時代に ──AIの台頭は、今日の社会にどのような変化をもたらしているのでしょうか? 私たちは、コンピュータの計算能力が6ヵ月ごとに倍増する世界に生きています。この新たな法則が、「ムーアの法則」(半導体の性能は18ヵ月ごとに倍増するという経験則)に取って代わったのです。
「ローマ帝国」のモチーフに異様なこだわりを持つ米国 ──2023年、上梓された『パクス──ローマ黄金期の戦争と平和』(未邦訳)は、あなたが書いたローマ帝国に関する本としては3冊目です。欧米人はなぜ、これほどまでローマの歴史が好きなのでしょうか。 フランスの歴史家のレミ・ブラッグは、西洋の本質とは、キリスト教になる前のローマ帝国に心が強く引かれるところだと指摘してみせました。 この指摘は、かなり当を得たものです。ヨーロッパは、かつてローマ帝国の西半分の領域に広がっています。だから、ヨーロッパの人は、どうしてもローマを意識してしまい、ローマを再建しようという大望がつきまとうのです。 わかりやすい例を挙げるならナポレオンですし、カール大帝も同じです。フランス革命のときも、画家のダヴィッドは、革命家たちを古代ローマ人に似せて描き、ナポレオンをローマ皇帝として描きました。 独立戦争の頃の米国でも、ロ
大川原化工機事件や袴田巌の無罪確定など冤罪事件が続いている原因として、日本の人質司法への批判が高まっている。長期勾留や自白の強要に近い取り調べ──日本で逮捕されると、被疑者はどんな扱いを受けるのか。他の先進国との違いを英誌「エコノミスト」が指摘する。 出世欲から事件を「捏造」 2020年、横浜市にある化学機械メーカー「大川原化工機」の社長ら3人が逮捕された。容疑は、生物兵器に転用可能な機器を中国へ輸出したというものだった。 3人は約11ヵ月間勾留された。5回の保釈請求は、いずれも裁判官によって却下された(6回目で許可)。捜査官たちは罪を認めれば釈放するとほのめかしたが、彼らは応じなかった。 1人は勾留中に胃がんが見つかり、適切な治療を受けられないまま亡くなった。最終的に全員の無実が証明された冤罪事件である。 この事件は、日本の刑事司法制度が抱える根深い問題を浮き彫りにしている。それは被疑者
BYDやニオといった中国の新興電気自動車メーカーの存在感がますます高まっている。BYDは2024年10月、四半期ベースで初めてテスラの売上高を上回った。EVにおいて、中国勢は世界の絶対的な覇者になったと言えるのか? 英紙のアジア編集長が意見をまとめた。 中国はすでに電気自動車の世界の覇者なのか? 深圳から広東省東南部にある東莞、広州へと中国の工業地帯を貫いて走る高速道路には、世界中の自動車メーカーのあらゆる車種が行き交っている。トヨタのセダンが産業用タンカーの間を果敢にすり抜け、マイバッハやメルセデスのような高級車が重役たちを運んでいる。テスラが静かな存在感を示し、フォルクスワーゲンのコンパクトカー「ゴルフ」のような世界的な定番車がマイペースな走りを見せている。 だが、これは全体の半分に過ぎない。目にする車の2台に1台はなじみのないブランドのプレートと個性的なヘッドライトを付け、電気モータ
かつて「琉球王国」と呼ばれていた沖縄県。小国でありながらも独特の文化を育み、それは現在も県民の誇りとして受け継がれています。近年では、こうした独自の料理や芸能、そして豊かな自然が海外の観光客をも魅了している沖縄ですが、その歴史を説明できますか? 琉球大学名誉教授の高良倉吉先生に解説してもらいます。 沖縄県で話される方言(琉球方言)は、沖縄県以外の日本人には理解できない、外国語のような響きを持ちます。しかし、言語学の観点からみると、「日本語」は「本土方言」と「琉球方言」に二大別されています。古い日本語から分離し、本土方言(狭義の日本語)と琉球方言にそれぞれ変化したのです。 それに象徴されるように、沖縄(琉球)の島々に居住した人々は、日本文化をルーツに持つ人々でした。しかし、言葉が変化したように、沖縄(琉球)の人々はやがて日本本土とは異なる歴史を歩むようになります。その象徴が「琉球王国」です。
「共感力」×「闇の性格特性」 心理学者が新たに重要な性格類型を発見するなど、よくあることではない。ふつう人間は、「この秋冬でいちばん話題の性格特性」といった話をメディア向けにどんどん生産するようにはできていない。 とはいえ現在、これに近いような状況が、いわゆる「ダークエンパス」への関心の高まりとともに発生している。 この用語はTikTokでも流行しており、すでに260万を超えるメンションがある。「#darkempathtok(ダークエンパストック)」なるハッシュタグもあり、「エンパス(共感能力の高い人)がダークになるとき」とか、「最も危険なパーソナリティ」といった不吉なタイトルの動画を見つけるのに役立つ。 ダークエンパスを最初に定義したのは、2021年に学術雑誌「人格と個性」に掲載された1本の論文だった。論文の共著者たちはダークエンパスを、「闇の性格特性(サイコパス、マキャベリズム、ナルシ
インテルの牙城を崩す 英半導体大手アームのレネ・ハースCEOは、ソフトバンクグループ(ソフトバンクG)の思惑について立ち入るような発言はしていない。だが、10月に英ロンドンで開催されたブルームバーグのテックカンファレンスでこう述べている。 「AIに関するあらゆる業務が、何らかのかたちでアームのプロダクト上で実行される。そうした未来を実現するため、私たちはソフトバンクGと対話を重ねています」 アームは1990年代初頭に創業された。当初、英国東部のケンブリッジシャーにある七面鳥小屋にオフィスを構えており、その頃からプロセッサの設計を手掛けていた。アームの設計ベースのプロセッサを搭載したデバイスは現在、3000億台近くに上るという。 アームは起業からいまに至るまで、ほぼ一貫して携帯電話の製造企業を顧客にしている。この数十年、パソコンとサーバー市場を独占してきたのはインテル社のプロセッサ「x86」
“半導体業界のスイス”とも言われるアームを変革する? 孫正義が目論む「エヌビディアの競合」創出計画に周囲が漏らす不安 2016年、ソフトバンクグループの社長(当時)だった孫正義は英半導体大手アームを約3兆3000億円で買収した Photo: Neil Hall / Reuters
精神が不安定なチワワを拾った筆者。どうにかして犬の面倒を見るなか、彼女自身もどん底に落ちてしまい、精神的に参っていく。 この記事は、愛をテーマにした米紙「ニューヨーク・タイムズ」の人気コラム「モダン・ラブ」の全訳です。読者が寄稿した物語を、毎週日曜日に独占翻訳でお届けしています。 人生に転がり込んできたチワワ 出勤するためにアパートの門を出たある朝、左側からざわめきを感じた。振り向くと、とても小さな犬が、歩道を小走りでこちらへやって来ている。声をあげながら後ろをついて来る人間たちを、その子は不安げに振り返っていた。 脱走したのか、と考えていると、そばまで来たチワワは脚に飛びついてきて、すがるように私を見上げた。思わず身をかがめて、彼女を抱き上げ、後を追っていた者たちに差し出した。 手を宙でパタパタと動かし、彼らはバラバラに合唱するかのごとく呟いている──「いやいや、誰かが車の窓からその子を
この記事は、ベストセラーとなった『the four GAFA 四騎士が創り変えた世界』の著者で、ニューヨーク大学スターン経営大学院の経営学者であるスコット・ギャロウェイによる連載「デジタル経済の先にあるもの」です。月に2回お届けしています。 彼女が負けた理由を議論するよりも、彼が勝った理由を考察する方が興味深い。わたしたち左派は「彼は僅差で国民投票に勝っただけだ」とか「ウィスコンシンはたった3万票差だった」といった言葉で自らを慰めようとするが、現実にはドナルド・トランプはカマラ・ハリスを完膚なきまでに打ち負かした。 トランプは初めて国民投票で勝利し、7つの激戦州すべてを制した。これは政治的な地震であり、従来型メディアと戸別訪問を20世紀の遺物に変えた。トランプはラテン系から13ポイントを獲得し※1、その衝撃はカリフォルニアの選挙戦にまで及んだ。その余震は今後4年間(そしてそれ以降も)続くこ
孤独が心身の健康に悪影響をもたらすという説が一般的になりつつある。しかし、ハーバード・ビジネス・スクール教授で「幸福」の専門家であるアーサー・C・ブルックスによれば、人は孤独から多大な恩恵を得られるという。 幸福な隠遁生活 「完全な孤独は、おそらく人間が耐えうる最大の罰である」 哲学者デイビッド・ヒュームは、1739年の著書『人間本性論』のなかでそう記している。「同胞から離れれば、あらゆる喜びは色あせ、あらゆる苦痛はいっそう残酷で耐え難いものとなる」 その通りかもしれないが、私は別の視点を求めていた。そこでこの4月、私はインドのダラムサラの山上に住む隠遁者を訪ねた。 ゲシェ・ロブサン・ツェフェルはチベット仏教の僧侶で、過去25年間、ほとんど人に会わずに孤独に生きてきた。果たして、彼の完全な孤独は罰だったのか? 私はそれが知りたかった。 ゲシェ・ロブサン・ツェフェルの住まいは、森のなかの高台
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