[Part1] 「匠」が立ち止まるとき、緊張が走る ユニクロ工場の最前線で ひと部屋に、200人はいるだろうか。そろいの帽子とポロシャツ姿で、一心にミシンを踏む女性のあいだを、小西英典(60)が小走りに動き回る。 立ち止まるのは、何らかの不具合を見抜いたとき。場の空気が瞬時に、ぴんっ、と張りつめる。 低価格競争が激しさを増すなか、色鮮やかなジーンズや、保温効果の高い素材などの開発で、快走を続けるユニクロ。年4億点の商品の大半は、中国の委託工場が製造する。 そこで技術指導にあたるベテラン職人チーム「匠」の一人が、小西だ。 週1回、上海から車で3時間ほど揺られ、田園風景の先に広がる浙江省寧波の工場群を訪れる。 糸や生地の製造から縫製まで、数カ所に点在する建屋は、体育館をいくつもつなげたよう。とにかく広い。ユニクロ商品だけで1万6000人が働き、日曜日を除いて、ほぼフル稼働している。 実演が一番