医師によって白い布を取り去られたその顔は、ありきたりだけどまるで眠っているようだった。 閉じきれずほんの少しだけ見える瞳は黒く、力なく開いた下顎から察せる口内はほとんどの歯が抜け落ちてくぼんでいる。 祖母は一昨年、口底癌で放射線治療を受けていた。 80を超えて、ステージⅣの口底癌を患ったものの、なんと再発の恐れはないとまで言えるほどに癌と戦った。認知症の症状こそ出始めていたが、元より辛抱強い人だった。それでも当時「いやだなぁ」とぽつりと呟いた声を私は覚えている。 癌も辛いし、放射線治療も辛いよね。それでも受けてくれてありがとう。 2分前に自分が何を言ったか覚えていてくれてなくても、私が孫だってあんまりわかってなくても、骨と皮しかないようなその手で握ってくれた手は暖かかったよ。 あの時よりももっとやせ細ってる気がする。 コロナ禍の所為で面会もできないし、一度だけしてもらったオンライン面会では