2016年夏のある日、盧昱宇さん(43)は中国南西部・雲南省大理市の路上で男たちの一団に取り囲まれた。黒いセダンに押し込まれ、頭を布ですっぽり覆われた。ガールフレンドはもう1台の車に乗せられ、盧さんの名を叫んでいた。彼はこう語る。 盧さんは数年前から国内の抗議活動やデモの最新情報を集め、ネットに投稿していた。世界中の活動家や学識者がそれをつぶさに読んでいたが、政府の検閲当局も同じだった。彼は当局のターゲットとなった。 中国共産党は長年、一党支配の脅威とみなすべき人々を罰してきた。だが学識者や活動家によると、習近平国家主席の下で、1989年の天安門事件における民主化運動の弾圧以降、最も容赦ない反体制派追及に政府当局は従事しているという。 「習体制下の8年間をみると、抗議デモや社会運動、市民の反発が公になることに対し、当局は異様に神経をとがらせている」。北京の清華大学で政治学講師を務めたことも