古今東西の映画のあちこちに、さまざまに登場する詩のことば。登場人物によってふと暗唱されたり、ラストシーンで印象的に引用されたり……。古典から現代詩まで、映画の場面に密やかに(あるいは大胆に!)息づく詩を見つけると嬉しくなってしまう詩人・大崎清夏が、詩の解説とともに、詩と映画との濃密な関係を紐解いてゆく連載です。(題字・イラスト:山手澄香) 今回のテーマは、第90回アカデミー賞の作品賞ほか4部門を受賞した「シェイプ・オブ・ウォーター」(ギレルモ・デル・トロ監督)です。 第13回:愛を囁く、最も聞き取りづらい声――「シェイプ・オブ・ウォーター」深い深い沼の底、藻草の森に包みこまれてしまったかのような、暗い青緑色の世界。「シェイプ・オブ・ウォーター」は、目を凝らして見ないとよく見えない、濁った水中の色調の中で繰り広げられる、お伽噺のような映画だ。 軸になっているのは、声を失った身寄りのない女性イ
