ゲームを語る者にとって「ゲーム性」という言葉は基本的にNGワードである。意味が非常に曖昧であるし、人によって使い方もバラバラであるからだ。だが本書の目的はタイトルがしめすとおり、まさにゲーム性とは何かを解き明かすことだ。その内容は記号学や身体論といった幅広い研究領域を参照しつつ、ゲームの難易度に対するプレイヤーの能動的判断に着眼した独自の理論を打ち立てるものになっている。また「開発現場から得た」というサブタイトルからわかるとおり、本書の著者である渡部修司氏と中村彰憲氏は共にゲーム開発に従事した経験がある。両氏とも現在は立命館大学に所属しているが、本書の内容はゲームにおける産学連携の成果といった側面もあるだろう。 既存研究を概観する前半部と本書独自の後半部 本書は大きく分けると、既存研究を概観する前半部(第1章から第7章)と、本書独自の主張と分析を行う後半部(第9章から第13章)に分かれてい