2004年発表 (幻冬舎)/幻冬舎文庫 ま3-2(幻冬舎) (2008.11.07) 引用箇所を幻冬舎文庫版に対応させるとともに、若干の追記・修正。 本書の中心となる仕掛けの一つは、視点人物を誤認させる叙述トリックです。 対馬つぐみが殺されたことを報じる記事(「プロローグ」)の後、第1章はつぐみへの想いをにじませる独白で幕を開け、次いで以下のようなやり取りが始まります。 「なあ、諫早。ファイアフライ館はまだか?」 突然、後部座席から無粋な声が聞こえてきた。平戸だ。目の前に浮かんでいたつぐみの笑顔は、つぐみの思い出は、一瞬のうちに平戸の野太い声によって儚くもかき消されてしまった。……つぐみ。 (中略) 「起きたんですか、平戸さん。(中略)」 ハンドルをゆっくり右に切りながら、億劫げに諫早は答えた。(後略) (単行本11頁/文庫13頁~14頁) このやり取りをみると、一人称と三人称が混在してい