<本誌11月5日号からスタートした、石戸諭氏による月1回の書評コラム。今回取り上げる「ダメ本」は、下村博文元文科相がリーダー論を説く新著だ。正しいことを書いているのに説得力はゼロ。その中身とは......?> 今回のダメ本 『日本の未来を創る「啓育立国」』 下村博文 著 アチーブメント出版 この本、最大のツッコミどころは、部分的に正し過ぎるくらい正しいことが書かれていることにある。 いわく人工知能(AI)が発達していくであろう、これからの世の中にとって、大事なのは「教え育てる」=教育ではなく、「啓(ひら)き育てる」=啓育である。いわく世界において異なった価値観と共生することが求められており、多様性を認め合うダイバーシティーの概念を社会が取り入れるべきである、と。 私は著者名を見返して、頭を抱えてしまった。「これは何かのギャグなのだろうか......」 著者の下村博文は元文部科学大臣にして、