「あなたに隙がある 誰かがそう言ったの?」 「両親も教師も最後には必ずそう言いました 私にも責任がある 気を引こうとしているんじゃないか 自意識過剰なんじゃないかって… でも小学生が担任の先生に抱き上げられて窓から落とされそうになったらしがみつくしかないんです たとえその先生が嫌いだとしても 友達からえこひいきされてると言われたとしてもしがみつくしかなかったんです(中略)私は疑い深くなりました―――…… 私に対してもです」 またまた吉野朔実『恋愛的瞬間』第1話 恋愛的瞬間より 私が初めて痴漢にあったのは小学生のとき。ピアノのレッスンの帰り道でした。まだ午後三時か四時頃だったけれど雨が降っていて薄暗く、私は傘を差してうつむきかげんに歩いていました。その時いきなり目の前に男の人が立ちふさがりました。私は、その人がどういう目的でそういうことをしたのかも分からなかったのだけれど、ただ怖くて逃げ