プレイバック2024

Vision Proは「一線を超えた」デバイス、仕事のお供に「nwm ONE」も by西田宗千佳

Apple Vision Pro。2月の購入以来愛用中

毎年この時期になると、「今年買ったもので、気になるものなかったですか?」というメッセージが、編集Y氏から届く。

というわけで、AV的視点で「今年買って良かったもの」を2つ紹介したい。

「移動時」だけでなく普段使いしているVision Pro

まあ、なんだかんだ言って、2月にハワイまで行って買ってきた「Apple Vision Pro」の影響は大きい。

そんなことを言うと「西田さん、高いカネ払ったからたくさん記事書いて持ち上げてるんじゃないの?」って言われそうだ。

それは断じて違う。

あ、いや、高くて財布への負担は大きいけれど、他の海外取材でそれ以上の海外渡航費を払っているのが実情。ライターという職業、これはこれでカネがかかるものなのだ。だから、かかったカネで目を曇らせることはない。

実際、画質・音質・体験の面で、Vision Proが特別なものであることは間違いない。

過去も、XR機器で映画やドラマを見ることはやってきた。だが「移動時に使う」のがほとんどであり、どうしても必要な時に使うもの……というのが実情だった。

だがVision Proについては、日常的に映画を見るためにも使うし、仕事をするためにも使う。日常的に使う実用性と魅力を備えた、ある一線を超えたXR機器であると感じる。

筆者は自宅と仕事場に大型テレビ(55型と48型)はあるものの、プロジェクターは置いていない。巨大かつ画質・音質にも妥協なく映画を楽しめるという意味で、Vision Proは「代用品を超えている」のは間違いない。

3Dで映画を見る環境としては、映画館を除けばおそらく現状もっとも良い環境であるし、イマーシブコンテンツも楽しい。

AirPods Maxを組み合わせて「音量を大きくして低音が響く映画」を見ると、特に面白いことにも先日気がついた。オーディオ的にはあまりいいことではないが、大音量+低音が響く時に、AirPods Maxが絶妙に振動するためだ。

特に空間オーディオの調整が効いた映画では、シーンの音響設計に合わせて「いい感じに振動する」ので臨場感が高い。おすすめの映画は、「ゴジラ -1.0」と「トップガン・マーヴェリック」。特に前者は非常に効果的である。

この12月にあったOSのアップデートで、Macとの連携で「ウルトラワイドディスプレイ」として使えるようになったので、より実用性が増した。

最新のvisionOS 2.2では、ウルトラワイド画面でMacを使えるようになった

快適にするための「ノーズパッド」前提のヘッドバンド選び

もちろん文句はたくさんある。

専用アプリは増えてきたが、iPad用アプリ公開元の中で「Vision Proでの利用を許可していない」ところが意外と多く、アプリが足りない。

お願いですから、GoogleさんにNetflixさんにebookJapanさん、iPad版アプリをVision Proでも使わせてください。公開してもプラスはあれど損は少ないですよ……。(サポートコストを嫌って公開していないのだろう、という予測はつく)

ボディは重く、フェースパッドで支えるのは不快だ。軽い次世代モデルが出るなら明日にも買い替える。Vision Proに不満を述べる声のほとんどは、結局のところ「重くて高い」からに他ならない。これが「安くて軽い」なら、ほとんどの人は文句を言わないだろう。

筆者は装着方法も色々工夫して、今は3つのものを組み合わせて使っている。

最近の筆者のVision Pro。3つのアクセサリを使って「ノーズパッド」で支える使い方に

1つは、頭頂部で支えるベルキンの「Belkin Head Strap for Apple Vision Pro」。

Belkin Head Strap for Apple Vision Pro

次に、Anna Proの「Apple Vision Pro 用圧力軽減コンフォート ヘッド ストラップ 2」。

Apple Vision Pro 用圧力軽減コンフォート ヘッド ストラップ 2

3つ目は、個人で色々な3Dプリントしたアダプターなどを売っているSHINOBU工房さんの「Apple Vision Pro用 ノーズパッド Nose Pro」。

Apple Vision Pro用 ノーズパッド Nose Pro

Vision Proの不快感の多くは、安定させるために「フェースパッドを押し付ける」ことに起因している。筆者は累計で4、50人に体験してもらっているが、たいていの人は、ずり落ちてくるのが怖いのか、バンドを強く締めすぎていて、そこから不快感を感じているのだ。

解決方法は2つ。バンドの締め付けをできるだけ軽くすることと。フェースパッドへの負担を減らすことだ。

究極の方法として選んだのが「鼻で支える」ことだ。

3Dプリンタ出力によるノーズパッドで支えている

SHINOBU工房さんのノーズパッドを使うわけだが、鼻に600gの重さがかかると、それはそれで辛い。なので、重量をできる限り頭部の広い面積に分散させ、鼻への荷重を減らす……というアプローチを考えて、今はこの3つの組み合わせにしている。

累計で1万8,000円近くかかるので、多くの人にお勧めするわけではない。本来は「製品パッケージに入っているもの」だけで快適であるべきものだ。

とはいえ、Meta Quest 3など他のHMDでも「快適さを改善するバンド類」は定番の周辺ガジェットであり、200g台くらいまで軽くならないと、この辺の解決は困難ではないかと思う。

なお、映画を見る時には遮光性を高めるため、ノーズパッドを外して純正のフェースパッドに変え、椅子にもたれかかるような姿勢で使っている。

フェースパッドが標準であるのは、結局、遮光性と安定性、安全性のバランスを考えてのものだろう。ノーズパッド型は、転んだ時などのけがのリスクは大きくなることが予想されるため、標準では採用しづらかったのではないか。ノーズパッドは自己責任でご利用いただきたい。

他人に迷惑をかけない大音量、「nwm ONE」は快適

Vision Pro以外で買って良かったものとしてNTTソノリティの「nwm ONE」を挙げておきたい。

NTTソノリティの「nwm ONE」。耳に負担がほとんどない「開放的」デザインが特徴

見ての通り「オープンすぎるヘッドフォン」であり、通気性と軽さ、負担の小ささが特徴だ。

音漏れは小さいが、周囲の音も盛大に入ってくるので、屋外での利用にはそこまで向いていないと思う。

だが、室内ならバッチリだ。

筆者は仕事場で音楽をかけながら仕事することが多い。普段はスピーカーだが、近隣への迷惑も考え、音量は控えめである。

しかし、没入したい・脳から周囲の環境を追い出して仕事したい時などは、ガンガンに大音量で音楽をかけたいもの。

そんな時、これまではノイズキャンセル型のヘッドフォンやイヤフォンをつけていたのだが、耳への負担感・蒸れ感などはゼロというわけにはいかなかった。

だがnwm ONEなら、負担はほとんどない。

音質もかなり良好。あくまでカジュアルな音だが、開放感のあるスッキリした音で楽しめる。音量をあげても、当然ながら近隣まで響くようなことはないし、スマホと連動したインターフォン(仕事場向けにはAmazonのRingを利用)の音も聞こえる。

なんとなく思いつきで買ったものだったが、これは明確にアタリであり、多くの方にお勧めしたい。

なお、上でnwm ONEとともに写っているスタンドは、以下の記事で書いた3Dプリンターで作ったもの。こちらも結構気に入っている。残念ながらブラックフライデーセールは終わってしまったが、セール自体はひんぱんにやっているので、タイミングを見計らって皆さんもぜひ。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、AERA、週刊東洋経済、週刊現代、GetNavi、モノマガジンなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。 近著に、「生成AIの核心」 (NHK出版新書)、「メタバース×ビジネス革命」( SBクリエイティブ)、「デジタルトランスフォーメーションで何が起きるのか」(講談社)などがある。
 メールマガジン「小寺・西田の『マンデーランチビュッフェ』」を小寺信良氏と共同で配信中。 Xは@mnishi41