コート
三陽商会のコート。
[世界が見ほれる、日本の逸品。]
2024.12.23
日本の技術と美意識が息づいた 100年愛せる〝純国産”コート。
コートを通じて伝える、ものを大事にする心
サンヨーコートの歴史は、まさしく三陽商会の歩みそのものである。1943年に設立された三陽商会の終戦後ゼロからの再出発をけん引したのがサンヨーコートだ。戦時中、夜間に襲来する敵機から身を隠す防空暗幕を再利用したレインコートが第1号と聞けば、堆積された歴史の重みもわかるだろう。その後、春先に着る「ダスターコート」や、銀幕のヒロインに倣った「ササールコート」が、50年代に大ヒット。一躍、国内屈指のコートメーカーとしての地位を確立した。時は流れ、設立70周年を記念して2013年に始動したのが「100年コート」プロジェクト。〝TIMELESS WORK.ほんとうにいいものをつくろう。”というコンセプトに基づいた製品はブランドのシグネチャーとして君臨する。
「100年コート」が目指すのは、長く愛される普遍的な一着。そこには、昔から日本で育まれてきた〝ものを大事にする心”を残したいという思いが込められている。手入れをしながら世代を超えて、孫の代まで着てほしい。願いを未来へと託す。
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こだわったのは〝純国産”であること。埼玉県の染色・織機工場で作られた高密度コットンギャバジンを使い、全国でも珍しいコート専業の自社工場「サンヨーソーイング 青森ファクトリー」で熟練職人が仕立てる。生地の分量に加え、寸法も大きく、パーツ数も膨大なコートは〝最も複雑な衣料品”とも言われ、縫製や組み立てに手間暇がかかる。同工場では、1着のコートにつき300〜400ある工程を完全に分業化。平均勤続年数約20年の職人たちは、全員が特殊技能を備えたスペシャリストというわけだ。これにより、クオリティーコントロールと生産効率の向上につながるのだという。単なる日本製ではない〝純国産”を謳うのもうなずける。事実、「100年コート」は、商品企画に始まり、織布・編立から染色や縫製、販売に至るまですべて日本で行った製品だけに与えられる認証「J∞QUALITY」の第1号。公的機関のお墨付きをもらった正真正銘の〝メイド・イン・ニッポン”と言えよう。
世代を超えて愛されるために「100年オーナープラン」というアフターケアも用意する。購入から3年ごとにコートを預かり、定期診断を実施。ボタンの取り替えや袖口・裾周りの擦り切れ補修などに、専門の職人が対応する。
100年先の未来。〝メイド・イン・ニッポン”が付加価値として認められるのを、このコートが見届けてくれるに違いない。
「サンヨーソーイング 青森ファクトリー」では、パーツごとに縫製を行い、最後に全体を組み立てる。時間と手間はかかるが、各部の精度が高まることで美しい仕上がりに結び付く。300以上の工程を要する「100年コート」の場合、生地の縮み分を見込んで、絶妙なテンションで引っ張りながらミシンをかける“引き縫い”や、ハンガーに掛けたコートをつるした状態でアイロンをかける“空中プレス”など、さまざまな職人技術が駆使される。後者は、細かいシワやクセを取りながら、実際に袖を通したときのような立体的なドレープが生まれるという。
Photograph: Tetsuya Niikura
Styling: Hidetoshi Nakato(TABLE ROCK.STUDIO)
Hair & Make-up: Ken Yoshimura
Text: Tetsuya Sato