myrmecoleonの「グラフで見るニコニコ動画」 第28回
pixivのVOCALOIDイラスト投稿を検証
VOCALOIDはいつから女性人気が高まったのか?
2014年06月19日 18時00分更新
この連載では、独自に収集したデータを使って、みんな知ってるようで知らないニコニコ動画とpixivの現在を紹介していきます。今回はpixivでの「VOCALOID」タグを調査してみました。連載一覧はこちら。
筆者紹介:myrmecoleon
明治大学米沢嘉博記念図書館スタッフでニコニコ学会β幹事。趣味で同人誌やニコニコ動画関連の研究をしてる人。記事に使ったデータ元の『ニコニコ統計データハンドブック2014』など同人誌をコミケで頒布。ブロマガでは連載記事の補足も。
Twitterアカウントは@myrmecoleon。関わった近著に『進化するアカデミア 「ユーザー参加型研究」が連れてくる未来』(イースト・プレス刊)。右の画像は筆者を擬人化?して描いてもらったキャラ「ありらいおん子」。男の娘。
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pixivでも人気のVOCALOIDと初音ミク
過去何回か紹介している「VOCALOID」はヤマハの開発した歌声合成ソフト。「初音ミク」発売以降は特にそのキャラクターに注目して多数のユーザー作品が投稿サイトに発表されており、歌声合成とは縁遠そうなイラスト投稿サイトのpixivにも、多数のイラストが投稿されています。
これまではニコニコ動画を中心にVOCALOID周辺のCGMの動きについて触れてきましたが、今回はpixivでのVOCALOIDイラストの動向について調べてみました。
VOCALOIDに関するイラストはpixivではもっぱら「VOCALOID」のタグで投稿されています。ただしニコニコ動画のようにカテゴリタグとして固定されているものではなく、「vocaloid」「Vocaloid」「ボーカロイド」「ボカロ」などの表記ぶれが存在します(pixivのタグカウントでは大文字小文字・ひらがなカタカナは区別。検索では共通して出ます)。またこれらのタグなしに「初音ミク」などのイラストが投稿されているケースも多々あります。
このため今回は「VOCALOID」と単純な表記ぶれの「vocaloid」「Vocaloid」、および「初音ミク」のタグのいずれかが付いたイラスト(以下、VOCALOID関連イラスト)について調査しています。
VOCALOID関連イラストは6月上旬までに約55万3000件の投稿がありました。これは二次創作的なタグの規模としてはpixivでは「東方」に次いで多い数となります。またこれまでに約15万2000名がイラストを投稿しており、投稿者数は東方以上です。
VOCALOID関連イラストはpixivが公開された2007年9月当初からよく投稿されており(初期はニコ動と同様に「VOCALOID」タグがなく「初音ミク」タグでの投稿が多い)、年々ゆっくりと増加し続けています。毎年ミクの日(3月9日)と初音ミクの発売日(8月31日)の前後は投稿数が増える傾向があり、2013年3月には約1万8000件のイラストが投稿されました。
その後、若干投稿数が減り気味ではありますが、投稿は月8000件前後、新規投稿者は月間2000名ペースで継続して推移しており、東方と異なり一人あたりのイラストの投稿数は少ないものの、現在も非常に人気の高いジャンルと言えます。
pixivでは初音ミクが圧倒的人気
3月9日と8月31日はイラストが急増
グラフ2でVOCALOID関連イラストのなかで投稿数の多いタグを並べてみました。タグとしては「初音ミク」「鏡音リン」といったように描かれている音源キャラクター名のタグが付けられることが多いです(後述)。その他では「落書き」「女の子」といったpixivらしいタグもよく付いています。
既存キャラである初音ミクなどを描くイラストのため初期は「版権」タグが比較的付いていましたが、最近はなくなり、代わって「オリジナル」タグの比率が増えています。
これは“初音ミクを描いたオリジナルのイラスト”を「オリジナル」と言っているケース(pixivの「オリジナル」タグは基本的には二次創作でない作品に付けるタグとして運用しているため不適当)もあるものの、最近はニコ動などでのボカロオリジナル曲のために描き下ろしたオリジナルのイラスト(描かれるキャラクターも既存のものではない)として投稿されているケースも多いようです。
「クリスマス」や「ハロウィン」といった行事に合わせての投稿も多いです。「塗ってもいいのよ」「塗ってみた」とは、“あるユーザーが投稿した塗り絵的な線画を、別のユーザーが色を塗る”という、pixivでの交流のかたちを示すタグで、VOCALOID周辺では2009年から2012年頃に流行したようです。
「塗らせていただきました」は「塗ってみた」の敬語系のタグのひとつでどちらも使われていますが、2011年頃からはこちらの使用が増えています。2012年以降では前述のとおり「ミクの日」やミクの発売日(「ミク誕生祭2012」等)のタグが目立ちます。
弱音ハク・たこルカ・桜ミクといったVOCALOID関連の派生キャラクターもよく描かれています。特に「ボトルミク」はpixiv発の初音ミクの派生キャラクターで、ミクの長い髪を金魚鉢の水に見立ててそこで金魚を飼っているという設定で描かれたイラスト群。これまでに4000枚近くのイラストが投稿されています。
特定のボカロ曲をテーマにしたイラストには楽曲関連のタグが付くことも多いです。特にハチの「マトリョシカ」は独特のビジュアルとパーカーのミク・GUMIの姿から人気が高く、他ジャンルの派生も含めて1万件近くが投稿されています。
また圏外ですが「カゲロウデイズ」も2011年に投稿が多く、2012年には「カゲロウプロジェクト」が見えます。しかし、以降はむしろカゲプロ関連のイラストは「VOCALOID」等のタグは付けずに投稿される傾向があり、規模の拡大もあってかボカロとは別のジャンルとして独立し出している印象があります。
キャラクターの投稿人気としては初音ミク・鏡音リン・鏡音レンのトップスリーが安定しています。ただしVOCALOIDタグ内の投稿比率の推移をみてみると、初音ミクは安定して高いものの、鏡音リン・レンほかその他のクリプトン・フューチャー・メディア社のVOCALOIDは年々投稿比率を落としています。
2011年・2012年は「マトリョシカ」等の人気曲で注目が高まったせいか「GUMI」の投稿が増えています(「めぐっぽいど」との表記ぶれがあるので実際はさらに高いと思われます)。巡音ルカ・KAITOを抜いて4番手までつけていましたが、2013年以降は比率を落としているようです。ほかIAと結月ゆかりは後発の音源キャラクターとしてはよく投稿されています。
ニコニコ動画でも初音ミクが最もよく投稿されているものの年々比率が下がっているのですが(連載第14回参照)、pixivでは比較的安定しており、2013年以降はむしろ初音ミクのイラストの投稿の比率が増えているようです。
ちなみにグラフ3の「初音ミク」は、他との比較を重視して「初音ミク」タグのみがあり、「VOCALOID」タグ等のないイラストについては除外しています。これを除外せずに入れると、2007年は9割が初音ミクのイラスト、2008年以降は6割前後が初音ミクのイラストです。「初音ミク」タグの付いたイラストのおよそ半数で「VOCALOID」タグが付いていません。
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