電波の割り当てをめぐる論争が始まった
移動通信システムに使われる周波数帯の検討が、総務省の「700/900MHz帯移動通信システム作業班」で始まっている。最大の焦点は、2011年7月のアナログ放送の終了したあと利用可能になる700MHz帯の割り当てだ。これについて総務省は、700/900MHz帯をペアにする割り当て案を出したが、クアルコムなど外資系メーカーは「国際標準に合わせるべきだ」と主張して対立している。
この状況を説明すると、まず携帯電話では端末から基地局に飛ばす「上り」の電波と、基地局からの「下り」に別々の電波が必要となる。総務省の案では、下の図のように上りが730~770MHz、下りが915~950MHzに割り当てられている。
しかしアジア太平洋地域の無線関連の標準化団体であるAWF(APT Wireless Forum)などで決まっている周波数案では、700MHz帯に上り/下りとも割り当てることになっており、日本のように900MHz帯とペアにする案はない。このため欧州もアジアも同じ方式で一つのチップが共通で使えるとしても、日本だけは異なるチップが必要になる。
これは細かな技術的な問題のように見えるがそうではない。日本の携帯電話はしばしば「ガラパゴス」といわれるように、世界の他の国と違う技術規格を採用してきたため世界に販売できず、携帯電話産業が衰退する原因になった。それもかつてのように日本市場自体が成長していたころはよかったが、今のように中国のほうがはるかに大きな市場となった現状で、日本だけ独自の周波数割り当てを行なうと、有力な端末メーカーは日本向けの端末を作らず、日本のガラパゴス化は決定的になるだろう。
海外との競争がなくなると、端末も基地局も日本製だけで高価になり、それはサービスの料金にもはねかえる。通信サービスは、日本が今後サービス業で成長する上で鍵になる産業であり、携帯端末は日本が大きな優位をもつ産業だ。それがこのように世界から孤立すると、海部美知氏も指摘するように、ただでさえ衰退している日本の携帯通信業界の「棺桶の蓋に釘」になるおそれが強い。
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