edのコマンドはすべて1文字。行を挿入するときは"a"や"i"、行を削除するときは"d"。編集内容を保存するときは"w"、edを終了するときは"q"。edの人々は長いコマンド名にわずらわされずに暮らしていたんだ。
書き間違えた言葉を直したいこともあるよね。たとえば"history"を"fiction"に置き換えたいとき、edの人々は一つずつ"history"を探して書き換えるのではなく、s/history/fiction/gのように、置き換える言葉を線で区切って並べていたんだ。簡潔さを好むedの人々らしいしぐさだね。
edにはコマンドモードと編集モードがあったんだ。テキストを直接入力するときに使うのが編集モード。テキスト入力を終えるときは、"."1文字だけの行を入力するんだ。そうすることでコンピュータに編集モードの終了を伝えられるし、ユーザもピリオドを打つことでモードの切替を意識できる。edではそんな人と機械への気配りはあたりまえだったんだ。
edの人々が主に使っていたのはディスプレイではなく、ロール紙に1行ずつ印字するテレタイプ。
今の私たちには一見すると不便に思えるつくりも、edの人々にとっては紙と時間を節約する工夫の詰まったものだったんだね。