完全大血管転移症という心臓の奇形を持って生まれ、0歳の時に手術を受けた少年、西条命が、大人になって天才小児心臓外科医になるという設定の「最上の名医」という漫画。第1巻第1話は、ここで読めるから読んでみてくれ:
http://websunday.net/rensai/set_saijo.html
この漫画、ついさっき初めて知ったんだが、俺、この西条命っていう主人公と同じ病気で同じ手術受けた。俺と同じ病気の人間が出てくる漫画は初めてだ。
完全大血管転移っていうのは、要するに心臓にくっついている2つの大きな血管が、普通の人とは反対にくっついている奇形。
「反対にくっついている」のが問題なので、簡単に言えば、血管を切って入れ替えれば健常者と同じになる。これがJatene手術。
俺は、これを1歳で受けた。今は生まれてから一ヶ月もしないうちに、すぐJatene手術をやってしまうのだが、俺が受けた時は姑息手術(完全に治すまでに延命させる手術)をして、1年ぐらい成長して心臓が大きくなって手術しやすくなってから、やるものだったらしい。Jatene手術受けたのは、俺が日本で30番以内ぐらいであると聞いている。
学力的には、ちょっと頑張れば他の大学の医学部に行けたのかもしれないが、俺は、この西条命って主人公とは違って、高校の間、医者になりたいと思ったことはなかった。医者は責任重大な仕事だと思っていたから、いくらドラマティックなエピソードになりそうだとしても、一度も「医者になりたい」と思ったことがない人間が進むべきではないと思ったし、それ以前に工学の方が自分には魅力的だった。
この漫画で描かれているような、執刀医と少年時代の患者が友達になるっていうことも、まずありえないと思う。執刀医は外科で、患者の予後は内科の先生が見るのが普通。俺も、年一回通院しているけど、物心ついたときから診てもらっているのは内科の先生で、俺を執刀した先生とは直接面識がないんだ。
はっきり言って日常生活では健常者とまったく同じなので、大学では保健センターだけが俺の病気について知っていて、卒論の指導教員とかも知らなかった。心臓病だって言うと大げさに捉える人が多いので、大学の友人にも、ほとんど教えてない。もちろん、ネットでももらさないように気をつけている。
今、正直、仕事が上手くいっていなくて、少し落ち込んでいる。客観的には、大学のレベルを落としても医者になった方が社会的地位も給料も高かったとは思う。(東大理IIIは、俺には無理だったと思う。)東大卒でも、社会に出れば、博士号でも持っていない限り工学の世界では、単なる技術者だ。こうやって落ち込んでいるときに、こういう漫画を見つけても、「医学部に進んだほうが良かった」とは思えず、工学部に進んだことを後悔していないところを見ると、やはり、こっちに進んでいたのは合っていたのだと思える。少し励みになった。やっぱり、多少辛くても自信なくても、淡々と仕事を頑張るしかないんだな。
完全大血管転移で東大に進んだのは、俺だけだと思っていたけど、この病気は2000人に1人の確率でおきるらしい。(ちなみに、この漫画で初めて知った。とてもためになる。専門外だけど、参考文献を知りたいなぁ。先天性の心臓の奇形自体は100人に1人割合でおきるってのは良く聞くけど。)東大の毎年の卒業者が3000人だから、毎年1.5人ぐらいはいる計算になるんだな。まぁ、そこまでは高くないと思うが、数年に1人ぐらいいても全然おかしくないんだな。
東大工学部で取る授業の申請は、Webを使って黄緑色がトレードマークの「学生情報システム」で行う。申請は学内だけからしかできないが、閲覧だけなら外部からでも出来る。この学生情報システムのアカウントと、図書館などに配置されている情報端末のアカウントは別で、それぞれ違うところが管理している。前者への質問は工学部の事務に言えばいいが、後者への質問は弥生にある情報何とかセンター(めったに行かなかったから忘れた・・・)にする。