2008-11-08

偽装請負(裏派遣)が悪い理由

http://anond.hatelabo.jp/20081108211610

読んでて思ったんだけどさ。

偽装請負の形もいろいろあるけど、一番の問題点はどう見ても労働者従業員である一個人を「個人事業主への発注」として働かせ、派遣違反逃れをしているところにあると思う。詳しく言うと労働者個人事業主とみなし、所得税社会保険労災含む)の徴収の対象外になるところが問題。これ、肉体労働世界においてはすっげー問題。業務中に大怪我をした場合、普通なら労災認定を受けるよな。だけど個人事業主だとそうはいかない。自分の身は自分で守るのが原則なので、普段から自分で民間の傷害保険などに入っておくしかない。ただ、これ問題発言かもしれないけどこの手の「ニセ個人事業主」の多くは労働者と事業主との明確な区別なんてついていない。「仕事中に怪我をしても労災があるさ」と思い続けたま仕事をし、いざ怪我をしたらその時になって「あなたは個人事業主だから労災なんてありませんよ」という事実を知らされる。DQNなんてそんなもん。

もっとも、勤怠管理をされるニセ事業主なんて労働局に駆け込めば、労働者として認定されるだろうし(参考:http://plaza.rakuten.co.jp/jip401k/diary/200710010000/企業責任を取らされるだろうがね。でも怪我をした人間がそのつど労働局に駆け込んで、自分労働者であることを主張しないと労災認定されないなんて馬鹿げた話は無い。国が偽装請負で一番問題視していたのはそこだと思う。だから今では個人事業主として求人をかけているブルーカラー職なんて無いと思うよ。大手がやってたら、まぁガサ入れだろうな。

ただ例外中の例外があるんだな。言うまでもなくIT業界。IT業界ってとび職みたいに突然大怪我をしたり死ぬというケースがまず無い(過労死自殺とかはあるだろうけどw)。だから問題が表面化するケース自体が、肉体労働と比べて格段に少ない。人が死なない限りお役人ってのは動かないことを、日本中小企業経営者は知っているんだよ。完全にお役人をナメているのだ。あと問題が表面化しないことの理由に、「労働者がそれなりに満足できるだけの金を得ている」という事実がある。IT業界ってのは他の業界に比べれば今は結構お金になる。どんなヘタレ初心者でもニセ個人事業主という歪んだ形態であれば40万円とか平気で毎月手にすることが出来るわけだ。これが15万円とかならマスコミもそこにかこつけてセンセーショナルに叩けるのだが、困ったことに当の本人がそれで満足しちまっていては被害者不在でどうしようもない。いや実際個人事業主たかだか40万円なんてメチャクチャ残酷な低収入だとは思うし被害者としか言いようがないんだけど、低脳な奴ってのはどこの世界にも居て、しかもこの不況下だろ。20年後の自分の生活より今の手取りが大事と考える奴が出てくるのはしょうがない。ギャンブルサラ金業界が儲かってることからもそれはよくわかる。下流層の射幸心はいつも目先に向けられるものなのだ。

こういうまともに人生設計を立てられない奴のために「強制的に自制させる手段」として退職金の積み立てや源泉徴収の仕組みがあるわけで、それが日本理想とする労働者のあるべき姿のはずだ。簡単に逸脱しちゃいかんのよそもそも。開業届けを出したり派遣社員として働く場合は厳しい国家試験パスしていないといけない、ぐらいの規制が必要なんじゃないかな。時代が時代なんだからやむをえないと思う。話は「自己責任」「自業自得」の言葉で簡単には片付けられない。それはアメリカサブプライムローン問題を見ていてもよくわかる。下流層は経済感覚が乏しいからああいう馬鹿げた金融商品に飛びついて自滅したが、自己破産者が続出して結局国の経済問題にまで発展してるじゃん。ニセ個人事業主についても、下流層が暴走しないような決まりごとや摘発はやっぱり必要だよ。これは擁護し過ぎかもしんないけど、ニセ個人事業主契約っていうのは言ってみればその手の下流層を食い物にしたビジネスだ。中小企業経営者はそのことをちゃんと自覚している。だから「あなたもフリーランスに」「束縛されない生き方」「仕事選びの新しいカタチ」といった言葉を巧みに使って馬鹿をその気にさせる術を身に付けている。

enジャパンやFindJobなどでIT関連の求人情報を見ればわかるが、「正社員」「契約社員」のほかに「業務委託」という雇用形態募集している会社がちらほら見受けられると思う。あれはほぼ(100%と言って良いかも)偽装請負案件。そんなことやってる企業求人を掲載する媒体媒体だよな。応募すればほぼ確実にどこかの企業派遣され、そこで派遣社員同様の扱いを受ける。一応個人事業主を装っている立場なので、青色申告をすることになるが、そもそも「通勤」して派遣労働者と同じ仕事をしているのに経費もクソもない。結果的に彼らは事業所として使用してもいないのに自宅の家賃を経費にしたり、身内を従業員にして発生してもいない賃金を計上したりして脱税はやりたい放題である。実は5、6年前まではその確定申告そのものをバックレていた奴も結構居たのだ。バックレた奴は無所得とみなされ、国民健康保険料は最低額(確か数千円)になるわけだ。税務署から怒られたのか、最近報酬を支払う段階であらかじめ数パーセント差し引いておき、確定申告の時期になるとその分を返還する企業が増えた。どこの世界に取引先から納税管理をされる個人事業主様が居るんだよ。そこまでやるんなら大人しく源泉徴収しろや。

・・・という具合なので、税務署社会保険庁から見てもニセ個人事業主存在というのは決して愉快なものではないはずだ。こんな悪しき商習慣を担ぐAll About共犯者もいいとこ。

こういう会社はJIETやeJOBGO、e-workなどを使って同業者と結託し、今までやりたい放題やってきた。中には協同組合を立ち上げあたかも非営利かのように装って一儲けを企んだ業者もあったぐらいだ。ここまで堂々とやられて労働局国税庁もなんとも思わないのだろうか。今のIT業界大企業よりもむしろ中小企業にこそ悪党が潜んでいるような気がする。「摘発はいつも大手企業から」とたかをくくっているはずだ。そうですよね日経BPさん。

社会に出て間もない世間知らずを労働者同然に扱っておいて、納税と福利厚生の面においてのみ個人事業主とみなすなんてお前らどんだけ悪魔なんだよおいと言いたくなるわ。今、何かと叩かれている人材派遣スタッフですら社会保険所得税も控除され労働法に護られてる立場なわけだが、ニセ個人事業主労働局に駆け込まないと労働者としての権利すら主張できない。人が人として扱われていないのはこういう世界にこそ多い(ネガティブな視点で語られる人材派遣像は大抵こっちとごっちゃになってるケースが多い)。誰かが悲鳴を上げなければ気がつかないっていうのも同じ国民として恥ずかしい話なので、こういう層が今少なくないということを認識しておいてもいいだろう。

追記

うほっ!

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20090318/326896/?ST=solution&P=1

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