どうも日本の学校って、何かと精神論になりがちなところがある気がする。
少なくとも俺の通ってたとこはそんな感じで。
例えば小学生の時。絵を描きましょう、なんて時間になったとき。先生は、何も言わない。ただ、校庭に出て、好きな物を見つけて、それを一生懸命描きなさい、心をこめて描きなさい、って言うだけ。
んなさ。心こめて描けっていってもさ。
あと、先生は、「課題物を描けなんて小学生には荷が重いだろうから、なんでもいいから自由に描くようにさせてみよう」って思ったのかもしれないけど、寧ろ、「自由にやれ」なんてほど難しいもんってない。
分からないままに、なんか適当に木を選んで、描き方もよくわからないから、なんか適当に色塗ったりした。
自分でもなんかよくわからんから、ってスタンスで描いてるから、できた絵も当然、別に気に入らない。ド下手とは感じなかったけど、もっとうまく、写実的に描けないものかな(写実的なんて言葉当時は知らなかったが)と思っていた。
でも、先生は当然のようにそんなテクニックを教えてくれない。ただ、遠足気分(あくまで先生的に。別に俺らは全然遠足気分じゃなかった)で外歩いて、好きなものを、子供のナチュラルな目線のまま描きましょう、的な。でもさ、んなこと言われても、俺ら描けない。描き方も教わらず、何を描けとも教わらず、ただただ「自由にやってみろ」って、今思うとこんなに難しいことはない。
で、それで採点されちまうわけで。通知表とか。だったら、「先生にいい風に評価される絵の描き方」を教えてくれよ、って思ってた。でも、先生は、「そういう小手先のテクニックじゃなくて、気持ちをこめて、子供らしいおおらかな絵を描くのが一番いいんだよ」とか言う。正直、わけがわからん。親に聞いても、別に芸術畑で育った訳でもない親は、「絵なんてほとんど才能なんじゃない?だから適当でいいんじゃない」としか言わない。好き勝手に描いても、全然上達なんてしねーし、でも俺の絵ってなんかものたりないなってのは思ってて、でもどうしようもないって先生も親もいうし、絵ってつまんねーな、色塗るのめんどくせ、で終わってた。
国語も、読書感想文とか、「○○の感想」とかいう類のものは困った。まず、何を書きゃいいのかわからん。読書感想文でいえば、3枚は書け、とか言われるんだが、小学生の感想なんて「面白かった」「つまらなかった」「よくわからなかった」そんなものしかないわけだ。感想文とか言われても、だから何を書けばいいのかそもそもわからない。例えばあらすじとかは書いて水増ししてもいいのか、なんか読んで思った感想ってのはどこまでの幅を言うんだ、そっから思い出した自分エピソードも感想のうちなのか?とか、全然分からない。先生に聞いても「自由に思ったままを書け」としか言わない。思ったことなんてねえし……「そこそこ面白い」しかねえし。
模範文すら教えてくれない。内容の組み立ても。何もかも。親に聞いても「感想は感想だろ」しか言わない。わけわからない。皆も同じくわけわからなかったっぽい。
とにかく、自由すぎる。
自由に考えろ。自由に書け。なんてのは、今思うとかなりの高等レベルだ。人間、枠があったほうが考えやすい。条件つきの方が、自由より寧ろやりやすいんだ。それに気がついたのは高校生のときだった。
自由にやれ、というわりに、しっかり点数だけはつける。いや、それじゃあさ、点数の指針を教えてよ、って思ってた。
そう。指針。それがないと、どうしようもできない。自由にやれなんて聞こえはいいが、当時のイメージとしては、あまりに膨大な大海の上を、一人プカリプカリと心もとなく浮かんでいる感じだった。そうじゃなくて、先生の方で用意してほしかった。きちっとプールにして。50メートルでくぎって。そんで、2週してこい、平泳ぎで、ってそこまで指定してほしかったんだよ。そうすれば自分の目標もたてられる。何も指針がない、何も教えられない、それじゃ目標もたてられない。反省も出来ない。
小学生は、自由にふよふよやらせるのがいいんだろうって先生は思っているのかもしれないけど、寧ろ逆じゃないか。
子供こそ、「これをやれ」って明確に課題を与えられた方が、熱中しやすいんじゃないか。
「でもそれじゃつまらないんじゃ?」って、どのみち自由に絵を描けなんてのもつまらんのだ。絵を描きたかったら、家で勝手に描いてる。もっと、絵にしたって、「影をつけると立体的に見えるよ。影はこうやってつけて。光源を決めて、そこからこうして」とかテクニックをもっと、バンバン教えて欲しかった。それがあれば、とりあえず、「何をやればいいのか」が分かる。それだけで大分違う。それに、上達が目に見えて分かるようになる。「模範的な絵」「模範的な作文」も見せて欲しかった。そしてそれのどこがどう「正解」なのか。小手先すぎるかな、というくらいのテクニックを、教えて欲しかった。そしてもっと、狭い枠の中で、課題を出して欲しかった。そのほうが、自分が上達してるのも目に見えてわかるし、何がダメなのか、何を目指せばいいのかもわかるから、モチベーションが上がりやすい。自由に作文を書け、絵を描け、なんていわれても、モチベーションは全く上がらない。何を目指しているのかすら、不明なんだ。作文だったら「こういう、型にはまった文章を、不自然でなく書けるようにしろ」っていう一定のゴールみたいなものが欲しかった。
作文とか絵とか、今思うと怖かったもんな。
あまりにゴールがなさすぎて。あまりに、とらえどころがなさすぎて。あまりに範囲が巨大すぎて。全体を把握できない。とっかかりもない。どうすればいいのか、ほんと分からなくて、どっからどう手をつければいいのか、全然分からなくて。
もっとも、小学生の自分には、そういう漠然とした想いをこうして文にする力は無かったから、何も言えないまま終わってしまったが。
そしてプラスするなら、「何が出来ればいいのか」という目標を、常に先生には子供に意識させてやってほしい。
「目標は具体的に何なのか?」ということを漠然ではなくしっかり認識するという大切さを、自分は大学はいってようやく知った。
「自由さ」なんて、どうせテクニック覚えていけば、成長過程で勝手に自分で色々やりだすもんだ。
もっと、漠然とした「絵を描きましょう。作文を書きましょう」とかじゃなくて、課題をしっかり与えて、テクニックをもっと教えて欲しかったよ。
追記。
「テクニックなんて自分で勝手に学べよ」とか「与えられるの待ってるんじゃなくて、そういうのは自分で考えろよ」とか言う人いるけど、そんなん小学生に求めるのは余りに過酷過ぎw板前修業中の若者に言うならまだ分かるけどさ。そういう事を言うのは、大人になってからの話。小学生にんなこといったって無理だって。そういう人は自分が小学生だったときを美化しすぎだと思うぜ。大体、子供のときなんてそんな「考える」力すらない、ゼロなんだから、最初から「自分で考えろ」型教育は、結局何も生み出さないよ。まず模倣、基本の型、そういうのを吸収した後に、「自分で考える」ことが出来るんだと俺は思うけど。ピカソだって基礎をちゃんとやってる。いきなりああいう絵を描いたんじゃない。ベートーヴェンなんかも、違う曲から旋律をマネしたりしてる。ていうかそういう特訓をするために「学校」てのがあるんだと思うんだがなあ。「自由にやれ」って言うだけじゃ学校の意味ってないだろ。そういう特訓をしてもいないのに凡人が「自分で考える」なんてやっても、ろくなことにはならない。それって単なる自己満足だと思う。ただキレイにノートまとめただけで、「あー、勉強したー」って言うみたいな。
あと体育も、言及してる人いるけど、「走り方」とか教えるべきだね。全然教えてくれないから、早く走るなんて無理なんだ、生まれつきなんだ、って俺思ってたけど、高校生になって陸上部の連中に練習法とか教えてもらったらタイム縮まって驚いたもん。そりゃ努力すれば誰でも10秒台、なんてのは無理だけど、でも縮めることは案外できるんだよなあ。
それと、「教えてくれればよかったのに」というタイトルにしたもんだから(これはちょっと、インパクトの観点で選んだところがあるんだが)まるで「先生のせいにしてる」みたいに受け止めてる人もいるけど、別に俺は「今俺が絵下手なのは小学校のときのあの先生のせいだ、恨んでやる!」とか思ってるわけじゃないよ。今は、型とか基本の大事さ、目標をしっかり認識することの大事さとかに気がついてきたから、それはもういいんだ。絵もまた描き始めてるし。
ただ俺みたいな小学生が、また今も量産されてんのかなって思うと残念な気がするんだよね。
それで絵に対する興味を俺みたいに一時的に失ったり、体育本当つまんね、ってなったりするのは勿体無いからさ。それこそ、「子供の才能を潰す」って奴だと思うんで。(『本当に才能があるひとはそんなこと関係なく這い上がってくる』とか言う人いるけど、才能のあるなしとメンタル面の強さって別に必ず比例するわけじゃないから。普通に、才能あるけど潰される人はいる。才能ある人は何しても潰されず上がってくれるはず、なんてそんな無責任に甘いこと考えてちゃいけないと思うよ。天才の才能を凡人が潰すなんて、いくらでも有り得ることだから)
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