2007-11-10

カンパニークラッシャー

社員もバイトも100%女性ばかりの某小規模雑貨店での出来事。

もともと女性1人で立ち上げたので、35歳の社長みたいな状態。若い。

私(30歳)はその広報・宣伝・PC担当だったので、

店内の装飾とかWebサイトとか通販とか似非POSの管理とかしてた。

だから基本店内には居なかったんだけど、バイト募集の告知を作ったときに

社長が急に「男性もOKっていれてみよっか」と半分イタズラみたいなことを言い出した。

まあ、こんないわゆるかわいい店にそんな告知貼ってもこないだろうと作成して掲示。

そしたら3日目に男の子がやってきた。

なんかいわゆる俗に言うメガネ男子。24歳の大学院生

ボーダーのシャツとか似合っちゃって、おとなしめで嫌味のないタイプ

悪く言えば主張が弱そうなタイプ。外見イメージだけは勝手くるりの岸田みたいな。なのでキシダくんと仮に呼ぼう。

なんか社長とか喜んじゃって即採用。まずはレジと倉庫&品出しやってもらおうという話になった。

はじめは「男くるんですかあ?」みたいに警戒してたバイトたちも、ひ弱そうなかわいい男子が来たことで

妙に盛り上がる。もともとジャンル的に「オトメ」みたいな連中なので

彼氏存在率が基本的に少ないし、よくわかんないけど専門出ばっかりなので

大学院とかいう響きに弱いらしく質問攻め、ハーレム状態。

「キシダくんって、どんな音楽きくんですかー?」

「あー、くるりとか」

「キシダくんって、専攻何やってるんですかー?」

「あー、仏文」

もうベッタベタだけど盛り上がりすぎて、仕事になってない。

しかも社長とかまで「研修」とかいいながら事務所で長時間捕まえてたりして

(その割には雑談ばかりとか)結構辟易してた。

妙に職場全体が彼を中心にして派閥とかが出来始める。

彼がいるってだけでシフトが偏りだし、品出しをしている彼にバイトがくっついていっちゃうので

レジががら空きになったりして、どうもバランスが悪い。

こりゃいかんと思って、社長に進言するも、意にも介してない。

「あなたはキシダくんがいることで店内に活気が出てきたことに気づいてない」

とか最後言い出すの。活気と浮ついた雰囲気は別だって言ってやりたかったが、

経営者としてどうなのよとすげえ感じて、底が見えた気がしてそのあと1ヶ月して仕事辞めました。

ただまあ、Webとか通販とかの各種引継ぎをしなきゃならなかったので

結局辞めた後も、ちょこちょこ割ともう一人仲のよかった事務の子とは連絡とってたのね

そこから伝わってくるのがすさまじい様相。

「○○さんがキシダくんに色目を使っているとバイトが揉めている」

「××さんはキシダくんがいないとシフトを絶対に入れない」

「△△さんはキシダくんのミスを一切隠す」

どこの女子高生だよ。仕舞いには社長がキシダくんだけの時給上げたりしてる。

私も限界です、なんて事務の子も言ってんの。どうしてそこまで彼女らが彼に入れ込めるのかがわからないが

とりあえず全員一致の意見で「キシダくんは何も悪くない」になってるから始末が悪い。教祖化しちゃってる。

どんだけ魅力的なんだよキシダと思ったが、実際彼は本当に何も主張しておらず

女の子の誘いにほいほい乗るわけでもなく、甘え上手なわけでもなく、

誰か一人を特別扱いするわけでもなく、そんな職場内のなんか微妙空気を感じるわけでもなく

(まあこの鈍さに問題があるんだろうけど)

ただ淡々仕事して、大学行ってる。確かに悪いことは何もしていない。

そんで先々月、どうやら論文がどうたらでキシダが半月バイトを丸々休んだらしい。

モチベーション下がりまくってた店内にひさびさにキシダが戻ってきて開口一番

論文研究がこれから本格的になるので、バイトやめます」

店内と事務所が一斉にどよめいたらしい。客いるのに。

そこからがすごい。大告白大会。客いるのに。

「そんな、私キシダくんいないならこの仕事やってる意味ないじゃん」客いるのに

「おかしいよ、論文くらいバイトしながらでもできるじゃん」客いるって

「いや、でもフランスまでしばらくいかなくちゃいけないんでご迷惑でしょうし」キシダ

「そんなことないよ、いてくれていいよ」社長登場

「だったらパリまで雑貨の買い付けいく。その手伝いしてくれてもいいし」社長それは…

「そんなずるい」「そのあいだお店はどうするんですか」「独り占めするんですか?」

他のバイト電話するやつ、泣き出すやつ、怒るやつ、社長につかみかかるやつ

店内の客も不審な目でみながらいつのまにか全部いなくなってた。

なのにキシダはきょとんとした顔をしてたらしい。

「キシダくんはどうしたいの!」

「いや、僕は単にバイトをやめたいというだけで他は特に…」

ここまで鈍いというか、空気読めないというのもすごいけれどなあ…

そうして何をするでもなくキシダは店を去り、バイト6人が一斉に店を辞め、あきれ果てた事務の子も辞め

店は半月間の臨時休業の後、10月末に閉店しました。

吉祥寺で急に閉まった、あの店の顛末です。

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