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前回「同人誌の在庫は悪である」
初回「おかえり僕のサブカルたち」
企業はもちろん、同人制作でも売り上げを作る事は本当に重要です。
お金がなければサークルを維持したり次の本を作ることができないからです。
なによりもモチベーションが死んでしまいます。
特に創作イラスト、しかも合同誌となると売り上げ難易度は上がります。
前回も書きましたが百化の創作漫画第一弾「3悪3」は、
5月のコミティアで50部ほど売れます。
既刊の「祭」も50部売れるのでやはり新刊を継続して出すことは
在庫の消化に繋がるという実績を得ます。
そこで考えるわけです。
漫画企画を単発で出して既刊を売っていくのもアリだ
しかし現状でイベントに出ても売れる既刊は50部程度…
おそらくこの数字は今後落ちていくので
1年経っても在庫が100部程度しか消化されない可能性もある
そうなれば同様のペースで頑張っても完売まで7年以上かかる…それは無理だ
打開策はサークルの知名度を爆発的に上げることだと短絡的なオレは考えます。
それには百化の得意分野である「イラスト」を使いたかったのです。
1年後の2月のコミティアに焦点を当て、勝負企画を構想します。
内容は、やはり、というか、懲りずに、
イラスト本となりました。
イラスト本の負債はイラスト本で取り返すべきという考えがあったからです。
前作「祭」はまだ800部ほど在庫が残っていました。
サークルが世に出てから4ヶ月目の決断です。
次回のイラスト本の企画名は「戦(いくさ)」に決まります。
発行部数はもちろん、リベンジの1000部です。
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1年後へ向けて
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同人誌「戦」32P 1000円
発行部数:1000部 現状の在庫数:4部(書店委託分のみ)
「戦」というタイトルは文字通り戦いへの覚悟が込められてます。
とにかく前作の売り上げが厳しかったので、なんとかするしかねーという思いです。
とにかく勝負は1年後です。
2010年のコミティア91で新刊「戦」、
そして既刊「祭」がどれだけ売れるかが課題でした。
現状の我々は企画力も制作力も低いのでひたすら力を溜める時期に入ります。
「戦」チーム結成
新作「戦」は定期発行している漫画企画の水面下で行われました。
前回との大きな違いはこんな感じです。
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だっいぶコストがかさみましたね。
装丁だったり原稿料なんかを頑張るとこうなります。
印刷は当時は絵描きの間で定番化してたグラフィックを使ってます。
数字で見ると厚さは下がっているように見えるかもしれませんが、
吉祥紙もミセスBもかなり良い紙なので前回よりも高級感があります。
さらに線数を280線(当時は無料、今は一部有料)にしたので細やかです。
原稿料は作家的に対するささやかな感謝として、
商業作品にはほど遠いですが導入していきます。
そしてお気づきの方もいるかも知れませんが、
これくらいの規模で制作すると1000部くらい刷らないと元が取れないのですね。
実質、販売できるのが献本など除く850部程度ですので、
最低でも500部は売らないと赤字になります。
通販を使うと書店にマージンを20〜30%ほど引かれるので手取りが下がります。
そういった理由から同人誌の通販は価格を上げるサークルが多いのです。
やはり会場で作品を売ることが一番利率が良いです。
企画はまたもやメンバー集めからはじめます。
この時期から一部のデザインを自分以外の人にやらせてみようと考え、
戦のロゴは卍に描いて貰いました。
さらに本のキャッチコピーを外注しようと考え、過去に一緒に仕事をした
作家の三角みづ紀にオファーをかけます。
これから2年後くらいに百化は分業体制を作っていくのですが、
当時はメインロゴやコピー以外のほとんどの作業は自分一人でやってました。
頑張れ漫画チーム!
さて、イラスト本「戦」がリリースされる翌年の2月まで
なんとかサークルは持たせないと行けません。
当然「祭」の在庫を売るミッションも継続しております。
漫画本リリースは忍耐強く続きます。
百化の漫画企画はそれなりに順調で「3悪3」、「裏技」に続き
2009年の11月には3冊目の同人誌「アストロターフ」をリリースします。
こちらは初版200部で増刷はしてません。
この企画では初めて表紙イラストをshirakabaに描いて貰いました。
タイトルロゴはオレが作ったのですがモノクロなりに雰囲気が出ていると思います。
コミティアには相変わらずshirakabaとnekoの3人で突っ込んでいきます。
半年以上イベントに出続けていると知り合いも増え、
交流も広がっていきます。
ライバル視していたサークルもちらほらありました。
中でも一番は同時期に活動を始めたサークル「SF研究会」です。
初期メンバーは派手な看護婦、panpanya、鎖国探偵、H軟膏の4人で、
コミティアの若手サークルとして注目が集まってました。
彼らの作品はとにかく完成度が高かったのです。
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SF研究会の既刊誌 左から「蝉の唐揚げ」「鬱BEAT」「ナナフシ」
「蝉の唐揚げ」は銀紙に単色刷りなのでスキャンむずいです;
百化のメンバーはイラストと漫画どちらも描くというようなオールラウンドタイプが多かったですが、SF研究会は漫画特化型でした。
「戦」ではSF研究会の派手な看護婦を呼び1枚ほどイラストを描いて貰ってます。
ちなみにオレもSF研究会の漫画本「ジェットブラック」のロゴを作ったりしました。
フライヤー1000枚を無料配布
「戦」の制作も佳境に入り、2009年12月になりました。
百化にはそれまであまり関係がなかった冬のコミケが近くなってきます。
うちのサークルは出ないけど、なんかできることはないかな〜、と考えます。
なにせ次回作「戦」は前作「祭」の倍近いお金がかかってます。
販売数が前回同様の50部ならさすがに活動停止は必至です。
ていうか200部でも厳しいでしょう。
売り上げに繋がるプロモーションの一手が欲しかったのです。
とはいえこの時期は前作の映像担当のピロシキ+が多忙で、
アニメーションを委託出来そうな知り合いがいませんでした。
悩んだ末、自力でなにか作るしかないな、と施策を思いつくのです。
それは冬コミでのフライヤーばらまき作戦でした。
2010年の2月に「戦」っていう凄い本が出るよ!という告知を載せた、
いわば同人誌のフライヤーです。
しかし、ただのフライヤーではパンチが足りません。
最高品質で特殊加工付きの両面フルカラーを宣伝用に制作しました。
結果、デザイン的にもそれなりに満足のいくものができました。
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A5変形+フルカラー+角丸で送料込みで印刷代は約3万円です。
3万円あればオンデマンドで50Pの本が100部くらい刷れますが、
この辺でケチることは損だと考えました。
今までの同人活動で知り合った人たちにお願いして
コミケのスペースにフライヤーを置かせて貰います。
お世話になった方々本当にありがとうございました。
ちなみにこの試みは好評だったので翌年も続けることになります。
イベントに来られない人は郵送で対応
とはいえ、コミケに来ない人にはフライヤーを渡せません。
「イベントは行けないけど欲しい〜〜〜」という希望があったので困りました。
そこでお得意の戦法に出ます。
すなわち自家通販で覚えた根性論。
みんな郵送しちゃえばいいじゃないかな!???というものです。
これは「年賀状企画」と題してサイトからフライヤー希望者を募り
応募があった方全てに無料でフライヤーを送るというものです。
もちろん送料もオレが自己負担し、一枚一枚メッセージ付きで郵送しました。
定形外郵便なので1通あたり120円かかります。
100人以上から希望があったので送料だけで12,000円を超えました。
今、同じ事やれと言われれば正直無理なのですが、
当時は必死だったこともあり全ての作業を一人でこなしました。
変なサービス精神を発揮して一枚一枚に下手なイラストを描きました。
・・・
オシャレでクールなサークルとして売り込みたかった百化です。
現実は読んで頂ければわかるようにメチャクチャ泥臭いことをやってます。
しかし作品が評価されない内はとにかく頭と足を使わないといけないと思います。
良い作品を生み出しているチームは相当な努力をしています。
百化でオレがやったことなど彼らの足下にも及ばず、
今思えば凄まじく不器用で、相当頭が悪かったし、詰めも甘かったのです。
本当に多くの学びを得ました。
戦いのはじまり
![](https://blogger.googleusercontent.com/img/b/R29vZ2xl/AVvXsEj3-MFnvgVLa3El5Q-Ph_0mbRnpmMOmLloBN_kSWxzku_YPtOQ3wuXEvwYz2YGNogL8rvo4Vr80lbC0CHmwNCyPmcdn1Ihl2q0dRB_x6JFgTrODYIHFnWwKgFJFaa6hbcANg5ACViTw1cem/s1600/p_2468.png)
それまで漫画企画はずっと会場に直搬入してましたが
さすがに今回以降はヤマトに集荷してもらいます。
関東なら段ボール1箱で片道1000〜1500円くらいです。
ハラハラする日々が続きます。
前回のトラウマがよぎっていきます。
そんなイベント直前
1月31日に予想外の事が起こるのです。
次回「同人誌の在庫は財である」へ続く
<連載目次>
第0話「おかえり僕のサブカルたち」
第1話「DESIGN FESTAで作品を売る……2年経っても赤字」
第2話「就職活動、HAL研究所の最終面接でやらかす」
第3話「カイカイキキ入社!村上隆の仕事現場 前編」
第4話「カイカイキキ入社!村上隆の仕事現場 後編」
第5話「同人イベント初参加で1000部を発行!!実売数はわずか50部」
第6話「これからは同人誌の時代、そう考えていた時期がオレにもありました」
第7話「同人誌の在庫は悪である」